可憐なサンタからのプレゼント
しんみり、そしてほっこりとした空気が漂うリビングに透花の声が響いた。
それは、違和感を覚えない程度に明るくわざとらしいものである。
「あれれ? ツリーの下に、他にもプレゼントがあるみたいだよ」
皆の視線が、一斉にクリスマスツリーの下に集まった。
そこには、隠されていて見えづらいが確かに数個のプレゼントが置かれている。
「サンタさん、やっぱりきてくれたんだ!!」
「…………………………!!」
美海と大和が、クリスマスツリーの下から丁寧にプレゼントを取り出した。
宛先が書いてあるメッセージカードを頼りに、皆にプレゼントを配っていく。
「白の、ループタイ……」
柊平に贈られたのは、白を基調としたループタイだった。
柊平は日頃からループタイを身に付けているが、毎日同じものなのだ。
それを考慮してのプレゼントなのだろう。
「おっ、冬用のジャージじゃねーか。これ来たら、走るのも寒くねーな」
蒼一朗に贈られたのは、冬用の防寒ジャージである。
最近は寒くなってきたので、室内でのトレーニングが増えていた。
これを着れば、また外に走りに行けるはずだ。
「銀の栞か……」
理玖に贈られたのは、シンプルな銀の栞だ。
この男、本の虫だというのに今まで栞を持っていなかった。
ペンなどの適当な物を挟むのを見かねてプレゼントされたのだろう。
「編みやすそうな針に、レース糸がいっぱいです! これで、たくさん小物が作れますね」
晴久に贈られたのは、彼が趣味とするレース編みに必要な道具たちだった。
彼が持っていなかった太さの針や、色とりどりのレース糸が詰められている。
これまではシンプルな物を作っていたのだが、これで制作の幅も広がるに違いない。
「わ~! 欲しかったイヤホンじゃん! これ、音質がめっちゃいいんだよね~♪」
虹太に贈られたのは、音質の良いイヤホンである。
夏生の一件があってから、虹太は以前よりも”人に聴いてもらう”ことを意識しながら作曲に挑むようになった。
このイヤホンは、必ず彼の助けとなることだろう。
「超音波洗浄機とは嬉しいなぁ。これでも、いつでも眼鏡を洗えるよ」
ほぼ二十四時間眼鏡をかけている湊人にとって、レンズの汚れは大敵だ。
だが簡単に汚れてしまうので、その度に笑顔で苛つきながらそれを拭き取っていた。
これを使うことで、少しでも彼のフラストレーションがなくなることが望まれる。
「自立式の、ハンモックだ……。これなら、部屋でも使える……」
心の趣味は、庭にあるハンモックで昼寝をすることである。
最近は寒くなってきたというのに、それは変わらなかった。
毎回体を氷のように冷たくして戻ってくるので、これからはこちらを使用してほしい。
「すげー! ぶら下がり健康器だ! これで、絶対に背を伸ばしてやるぜ!!」
颯に贈られたのは、ぶら下がり健康器だった。
これで運動すれば、最近ぴたりと止まってしまった身長も再び伸びるかもしれない。
目標のあと八センチメートルを伸ばすために、彼は毎日これにぶら下がり続けるだろう。
(なんだこのクッション!? すっごいうまそうな匂いがするぞ!)
ぱかおに贈られたのは、ほのかに蜂蜜の香りがするクッションだった。
とても気に入ったようで、早速その上に寝転がり寛いでいる。
香りはしても、味がしないことがいささか残念そうではあったが。
それぞれの嗜好に合ったプレゼントだったようで、リビングには温かな空気が広がる。
元気がなかった大和と美海も、いつの間にか笑顔になっていた。
「サンタさん、ちゃんとみうたちのおてがみよんでくれたんだね!」
「………………………………」
「やまとくん、どうしたの?」
だがここで、大和があることに気付いてしまった。
美海の着ている服の袖を引いてから、悲しそうに一人の人物を見る。
「あ……」
「………………………………」
大和の視線の先にいたのは、透花だ。
そう、彼女の分だけプレゼントがないのだ――――――――――。