お宝は、薬の香りが立ち込める場所に
あの話し合いから、あっという間に数日が経った。
虹太は友人のサンタクロースに手紙を送ったものの、未だに返事は来ない。
「う~ん、特に忙しい時期だから、手紙見てないのかもね~」
「虹太くん、ありがとう。もうクリスマスまで一週間くらいしかないし、私たちでなんとかするしかないね。湊人くん、虹太くん、大和くんと美海ちゃんに聞いてもらえたかな?」
この間と同じように、大和と美海が眠ってから一色隊の面々はリビングに集まっていた。
「もちろん。本カヤで出来た物が欲しいみたいだよ。子どもにあげるにはちょっと高いとも思うけど、長く楽しめる物だしいいんじゃないかな」
「俺も聞いたよ~! 前に聞いた時と同じで、ピンクのキッズギターが欲しいって言ってた! 値段はピンキリだけど、あんまり安いやつじゃない方が個人的にはオススメだね! 美海ちゃんはちゃんと続けると思うから、それなりの値段でもいいでしょ♪」
「二人とも、ありがとう。素人だと詳しいことは分からないから、湊人くんは蒼一朗さん、虹太くんは心くんの買い物に付き合ってもらうって形で大丈夫かな?」
透花の言葉に、まずは湊人と蒼一朗が賛成する。
「僕は構わないよ。本格的な物は重いから、柏木さんが一緒の方が助かるし」
「探り入れてもらって、どんな将棋盤がいいかまで決めてもらったからな。荷物持ちでもなんでもするわ。ってかお前、こういう時はお得意のインターネットは使わねーんだな」
「自分の目で見た物しか基本的には信じないからね。ネットで買い物なんて出来ないよ」
「あ、そっか。お前ってそういう奴だっけ」
次に、虹太と心も頷く。
「俺も、もちろんいいよ~☆」
「僕も……。よろしく、お願いします……」
「いえいえ~! そういえば、楽器屋さんの近くに最近はちみつスイーツ専門店が出来たんだよね☆ ついでに一緒に行こ~♪」
「はちみつ……。行く……」
二組とも、話は纏まったようだ。
「くれぐれも、買ってきたプレゼントが二人に見つからないようにね。理玖の診療所が、大和くんと美海ちゃんが立ち入ることがなくて隠し場所には最適かなー、なんて」
「……はあ、わかった。薬の匂いが移ってもいいなら、好きにして」
透花に笑顔でお願いされ、理玖がそれを断ることなど出来るはずもない。
少しの間の後に、溜め息交じりに了承の返事をするのだった。
数日後、買い物組の四人は大和と美海に気付かれないようにプレゼントを用意した。
それを、薬の匂いが立ち込める理玖の診療所の一室へと隠す。
そして今日、遂にクリスマスイブの夜がやってきたのだった――――――――――。