雰囲気は緩いけど、頭のネジは緩んでないよ~!
「……遂に頭がおかしくなっちゃったのかな?」
「前から頭のネジが緩い奴だとは思ってたけどよ……」
サンタクロースといえば、架空の存在のはずだ。
そんな彼に手紙を出したのだと、虹太は飄々と言い切った。
湊人と蒼一朗から、辛辣な言葉が浴びせられる。
理玖や柊平も、信じられないものを見たという表情をしていた。
「ちょっとちょっと~! 俺、別におかしくなんかないからね! なんて言ったらいいかな? 職業サンタ? そういう人が友達にいるんだって~!」
そのような態度を取られても、虹太は明るいままだ。
そして、そのサンタクロースとの出会いについて話し始めた。
「夏に、みんなで避暑地に行ったじゃん? その時に、冬はサンタとしての仕事をしてる北国のおじいさんに会ったの! サンタっていっても、ほんとにクリスマスの夜に空を飛んでプレゼントを配ってるわけじゃないよ? 冬になると、幼稚園とかのイベントに登場したりするんだって。トナカイも飼ってるって言ってたから、半分本物みたいなものだよね!」
遊園地にあるショーなどによくいる、ヒーローと同じようなものなのだろう。
決して本物ではないが、それを仕事にしていると虹太は言いたいのだ。
「前に美海ちゃんに、俺はサンタさんと友達なんだよって話したんだ。そしたらそれを覚えてたみたいで、手紙を書きたいって言うからさ。せっかくだから大和くんも誘って、そのおじいさんに手紙を送ったってわけ! 住所は聞いてたからね~」
この話を聞き、皆は納得したらしい。
蒼一朗と心が気になるのは、その手紙の中身だ。
「そうだったんだ……」
「……なるほど。納得したわ。で、手紙にはなんて書いてあったんだ?」
「え? そんなの見るわけないじゃ~ん」
「ん……?」
「は!? なんで見てねーんだよ! 結局、何が欲しいのかわかんねえじゃねーか!」
「いやいや、何言ってんの!? いくら子どもとはいえ、プライベートを覗くようなしつれーな真似は俺しないから! そのまま封を閉じて、サンタさんに送りました~!」
虹太の言葉を聞き、蒼一朗と心はがっくりと肩を落とす。
結局、大和と美海の欲しい物は分からず振り出しに戻ってしまった。
「二人とも、そう気を落とさないで。虹太くん、そのおじいさんに連絡は取れる?」
ここで、今まで皆の様子を穏やかな表情で見守っていた透花が口を開いた。
「手紙なら取れるよ~。耳が遠くなってきてるから、あんまり電話は出ないんだって。字が小さくて読みづらいから、メールもしないって言ってたし」
「じゃあ、手紙で二人が何を欲しがっているのか聞いてもらってもいいかな?」
「もっちろーん☆ でも、この時期は忙しいから返事は期待できないと思うよん」
「うん、それで大丈夫。二人が将棋盤とギターを欲しがっていることは確かだから、プレゼントはこの線で進めてもいいんじゃないかな? もしおじいさんから返事が来たら、それに合わせて臨機応変に動こう。クリスマスまで時間はあるし、まだ焦る必要はないよ」
透花が微笑むとその場の焦燥感が消え、代わりに安堵感が広がっていく。
「湊人くんと虹太くんは、二人にそれとなく探りを入れてもらってもいいかな。蒼一朗さんと心くんが聞くとさりげなくなくなっちゃいそうだから、師匠組にお願いします」
「りょーかい☆」
「はいはい、お任せを」
透花の発言に、蒼一朗と心はどこか気まずそうな表情を浮かべる。
自然に聞き出すことが出来ないという自覚があるのだろう。
こうして一色隊は、大和と美海に最高のプレゼントを贈るために動き出したのだった――――――――――。