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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十一話
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僕が逃がすわけないでしょ

 コンサートはつつがなく進み、遂に最後の曲となった。

 ステージには、白の衣装に身を包んだ夏生たちの姿がある。


「きゃー! 軍服っぽい衣装だよ! すっごいかっこよくない!?」

「うん! なんか、今日の衣装いつもよりもいいよね!」

「わかる~! 曲も、新曲ばっかなのにすんなり耳に入ってくるっていうかさ!」

「前の曲を全然歌わないのは気になるけど、みんなのソロ曲も聴けて大満足だよ~♡」


 夏生たちも観客も、盛り上がりは最高潮だ。

 その様子を、客席の片隅で面白くなさそうに見ている二人の男がいる。

 夏生たちに楽曲と衣装の提供を断った、作曲家とデザイナーだ。

 彼らは、自分たちの力がなければ成功など有り得ないと思っていた。

 どんな惨めなコンサートをやるのか見てやろうという思いで足を運んだのだ。

 だが、現実は彼らの想像とは全く異なった。

 夏生たちは新たな曲と衣装を作り、ステージに立っている。

 それだけではなく、彼らがプロデュースしていた時よりも何倍も盛り上がっているのだ。

 コンサート序盤でそのことに気付いた二人は、急遽末端のスタッフを買収し、音源や衣装を壊すという妨害工作に出た。

 自分たちの協力なしでの成功など、あってはならないからだ。

 だが、夏生たちはそれにも負けなかった。

 夏生のソロ曲は、生演奏と相まって客席を感動の渦に巻き込んだのだ。

 そして、壊したはずの衣装とは全く別の服を身に纏い、今もステージで輝いている。


「こ、こんなはずでは……! 音源も衣装も確かに壊したんだぞ……!」

「まさか、スタッフの裏切りがあったのではないか!? あんなに金を渡したのに……!」

「……いや、証拠の写真も貰ったんだ。そんなことはありえない……!」

「じゃあ、なぜ奴らは歌い続けられるんだ……!? 今日のコンサートが失敗して、私たちに頭を下げさせる計画が台無しじゃないか……!」


 夏生たちの歌声と観客の歓声に満ちたホールで、二人の男の話し声に気付く者はいない。

 ――――――――――ただ二人を除いては。


「……ふふふ、詰めの甘い人たちだよねぇ。あんな会話を、ここでしちゃってさ」

「……録音したの?」

「うん、バッチリさ。正確に言うと、録音だけじゃなくて録画もしたんだけどね。音だけじゃ、シラを切き通されちゃうかもしれないでしょ?」

「すごい、ね……」


 二人の会話を、湊人と心が録音、そして録画していたのだ。

 このことが公になれば、彼らは業界での地位を失うことになるだろう。

 ほぼ同時刻、ステージ裏では今回の実行犯が柊平と理玖によって捕えられていた。

 湊人がアリバイなどによって導き出した人物に脅しをかけると、あっさりと自白したらしい。

 住所や家族の勤務先などの情報まで握られていては、逆らうことは出来ないだろうが。

 こうして夏生たちのコンサートは、歓声の止まぬまま大成功の内に幕を下ろしたのだった――――――――――。

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