フィアレス・スマイル
虹太と夏生がステージに立っている頃、楽屋には柊平が戻ってきていた。
その手には、一色隊の白い軍服がある。
颯は、これを新たな衣装にしようとしているのだ。
軍服ならば、人数分が揃った状態ですぐに用意することができる。
幸運にも壊されていなかった小物などを付ければ、それぞれの個性も活かせるはずだ。
「透花さん、本当にいいんすか!? ちっさいけど、穴とか開いちゃいますよ!?」
「大丈夫だよ。元々、きっちり着るのが嫌いでアレンジしている人もいるくらいだし」
「了解っす! 晴久さん、蒼一朗さん、これお願いしてもいいすか!?」
「わかりました!」
「任せとけ!」
颯が指揮を取り、裁縫が得意な晴久と蒼一朗に仕事を振っていく。
そんな中、湊人が柊平、心、理玖の三人に声をかけた。
小声で何かを話すと、柊平が透花の方へとやって来る。
「……隊長、私たちは力になれませんので少し席を外させてもらいたいのですが」
柊平の後ろでは、眼鏡のブリッジを押し上げながら湊人が不敵な笑みを浮かべている。
それを見て、透花には何かピンとくるものがあったのだろう。
「わかった。四人だけで平気? 私も行こうか?」
「いえ、隊長はこちらで緒方たちを手伝ってやってください」
「了解。じゃあ、みんなに任せるね」
「安心してよ、透花さん。絶対に逃がさないから」
笑顔のまま、湊人は三人と一緒に楽屋を出て行く。
「颯くん、私は何をしたらいいかな?」
「このパーツを、こっちに付けてほしいっす!」
「わかった!」
その背中を見送ると、透花も新たな衣装作りへと加わったのだった――――――――――。