想いを一つに、駆け抜けよう。
「た、大変です……! 衣装と音源が……!!」
スタッフが慌てた様子で楽屋に入ってきたのは、コンサートの中盤の頃だった。
話を聞くと、音源が入ったディスクと衣装が何者かによって破壊されてしまったそうだ。
例の作曲家とデザイナーの手の者の仕業と見て間違いないだろう。
「どうしてこんなことに……!?」
「なぜ見張りをつけていなかった!?」
「一刻も早く犯人を捜し出すんだ!!」
透花たちが楽屋を出ると、スタッフたちは明らかに困惑してしまっている。
「虹太くん、颯くん、どうにかなるかな?」
「そうだな~。壊されたディスクってどの曲~?」
「俺も、どの曲の衣装なのか知りたいっす!」
「お、音源は有川くんのソロ曲で、衣装は大トリの曲です!」
落ち着いた声で話しかける透花に、虹太と颯はいつも通りの明るい雰囲気で答える。
スタッフの答えを聞くと、虹太はなんでもないことのように言い放った。
「夏生くんのソロ曲か~。確かこの会場って、グランドピアノがありましたよね?」
「は、はい!」
「じゃあ、俺が伴奏しますよ~。バラードだから、ピアノだけでもそこまで気にならないと思うし。そのピアノが使えるかどうか聞いてもらってもいいですか~?」
「し、しかし練習もせずにいきなり本番というのは……!」
「へーきへーき! 夏生くんはふつーに歌うまいし、今日はいつにも増して集中してるしね~。俺も、失敗なんてしないので安心してください☆」
「……わかりました! 使用許可、取ってきます!」
「よろしくお願いしま~す!!」
スタッフは、急いで廊下を走っていく。
いい雰囲気で進んでいるこのコンサートを、なんとしても成功させたい。
それは、皆同じ想いなのだ。
「颯くん、衣装はどう?」
「どれくらい壊されちゃったかわかんないんでなんとも言えないすけど、縫い直すよりは新しいやつを用意した方が早い気がします。俺に一つアイデアがあるんすけど、ちょっとこれは偉い人に怒られそうっていうか……」
「大丈夫だよ。言ってみて」
透花に促され、颯は自分の考えを話す。
それを聞いた透花は、悩む様子もなく即決した。
「よし、それでいこう」
「え!? 自分で言っといてあれなんすけど、ほんとに大丈夫すか!?」
「大丈夫だよ。そうと決まれば、早速動き出さなきゃ! 柊平さん、頼めるかな?」
「……はい、二十分以内に確保してきます」
「お願いします。他のみんなは、壊された衣装を確認して出来ることを手伝おう!」
こうして一色隊は、新たな衣装の確保に向けて動き出したのだった。
最後の曲になるまで、あと一時間ほどの時間がある。
それまでに彼らは、無事に衣装を揃えることが出来るのだろうか――――――――――。