恋するオンナノコは強いのよ!
「途中だけれど、そろそろ行かないと。みなさん、ゆっくりしていってくださいね」
一時間が経ち、仕事に戻らなければならない透花が去っていく。
彼女は裁縫も出来るようで、短い時間ではあったが作業に貢献していた。
寧々は、透花と颯が仲良く会話をしている姿を見せつけられる形になってしまったのだ。
彼女自身は、未だに颯と一言も言葉を交わしていないにも関わらずだ。
(……悪いことしちゃったかしら)
寧々をこの場に誘ったのは、由莉である。
責任を感じながら彼女を見ると、寧々は席を立ち颯に話しかけていた。
「お、緒方くん! か、確認お願いしますっ……!!」
「うえっ!? お、おおおおおおおう……」
寧々の瞳は、真っ直ぐに颯を見つめている。
透花と颯の仲の良さを見ても、怯んではいないようだった。
寧々が透花のようになれないのは、彼女自身が一番わかっている。
自分なりに、颯との距離を近付けていくしかないのだ。
(……余計な心配だったみたいね。恋するオンナノコは強いもの! 頑張んなさいよ!)
由莉は心の中で寧々にエールを送ると、再び作業に戻った。
こうして、衣装作りは着々と進んでいく。
皆の協力を受けた颯は、コンサート一週間前には全ての衣装を完成させることができたのだった。