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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十話
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※徹夜は体によくありません。

 夏生が一色邸を訪れた、翌日のことである。

 皆で集まって夕飯を食べているのだが、船を漕いでいる者が二人いた。

 時間も忘れるほどに熱中し、夜通し作業を行っていた虹太と颯だ。

 虹太は既に何曲かを完成させ、それを元に颯が衣装をデザインする段階まで来ていた。

 二人ともかろうじて手と口を動かしているが、今にも眠ってしまいそうだ。


「二人とも、食べ終わったら少し寝た方がいいんじゃないかな?」

「え~? 俺、めっちゃ元気だよ~☆」

「俺もっす! まだまだ頑張るっすよ!」


 透花が心配して声をかけるものの、二人には休憩する気がないようだ。

 それどころか、理玖相手にこんなことを言い出したのだ。


「りっく~ん。りっくんお手製の、徹夜が楽にできちゃう薬とかない~?」

「それいいっすね! 俺も欲しいっす!」

「……もしあったとしても、僕は医者としてそんな薬は絶対に処方しない」

「え~? すっごい効く栄養剤とか、そういうのでもいいからさ~!」

「なんかないんすか!? こう、ハイになれるようなやつ!」


 バッサリと切り捨てられたものの、虹太と颯は諦められない様子だ。

 まずは理玖が、颯に追い打ちをかける。


「……夜にきちんと寝ないと、背が伸びないよ」

「うぐっ……!」

「……隊員で一番背が低くなる日も近いかもね」

「俺、今日は寝ます! めっちゃ寝ます!!」


 身長に関する話に、颯は敏感なのだ。

 現在一色隊で心の次に身長が低い颯は、このことをとても気にしている。

 そのため毎日牛乳を飲んでいるのだが、あまり効果は得られていない。

 虹太に追い打ちをかけたのは、夜通し一緒に作業をしていた湊人だった。

 彼は徹夜でゲームをすることに慣れているため、二人よりもピンピンしている。


「僕、今日は徹夜しないからね」

「え!? なんで!? 湊人くん、全然眠くなさそうじゃーん!」

「まだ報酬もらってないし、僕にだってやりたいことがあるもの」

「そんな~」

「昨日は勢いに負けて付き合っちゃったけど、今日はパスするよ」

「……わかった。湊人くんがいないとなんにもできないから、俺も今日は寝る~」


 虹太が一人で出来る作業には、限界がある。

 曲にしたいメロディが溢れて仕方ない虹太は、ほぼ全ての曲を楽譜に書き起こしていた。

 そのため、現在は編曲の段階まで来ている。

 湊人の協力が得られないのであれば、続行は不可能なのだ。

 虹太と颯はこの日の夜、前日分を取り戻すかのように熟睡した。

 こうして二人は周囲の人間を少しずつ巻き込みながら、着実に楽曲と衣装のデザインを完成させていくのだった。

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