アップルパイと待ち人と
「このアップルパイ、とってもおいしいね!」
「だろ!? 晴久さんの料理はマジでうまいからなー!」
颯と夏生は現在、颯の部屋で晴久特製のアップルパイを食べている。
今後の対策を練るため、由莉の店から移動したのだ。
おやつを食べ終え一息ついたところで、話し合いを始める。
「デザインを考えるにしても、まずは曲が必要だな!」
「そうだよね……。曲のイメージに合わせて、どんな衣装にするか決めるし……」
歌う曲がなければ、衣装を作ったところで意味がない。
そのことを誰よりも理解している夏生は、浮かない表情である。
そんな夏生の背中を叩くと、颯は元気よく笑った。
「そんな心配すんなよ! 俺に一つだけアテがあるんだ!」
「ほんとに!?」
「おう! 連絡したら、そろそろ帰ってくるって言ってた! 玄関まで迎えに行こうぜ!」
「え!? 緒方くん!?」
夏生に詳しい説明もせずに、颯は部屋を出て行ってしまう。
慌てて立ち上がると、夏生も急いで颯の後を追った。
五分ほど待ったところで、玄関の扉が開く。
「虹太さん! おかえりなさいっす! 有川のために、曲を作ってください!」
「わあ! ビックリした~! って、え? 曲ってどういうこと?」
そこに立っていたのは、虹太だった。
虹太は一瞬驚いた表情をしたものの、颯の隣に立つ夏生を見て何かを察したようだ。
「二人とも、立ち話もなんだし俺の部屋においでよ~。詳しい話はそこで聞くからさ☆」
「あざっす!」
「あっ、ありがとうございます!」
こうして三人は、虹太の部屋で話をすることになったのだった。