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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十話
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絶対に諦めない!

「実はね、今度いつもよりも大きな会場でコンサートができることになったんだ……」

「おっ! それはめでたいな!」

「うん、そうなんだけど……。手放しで喜べる状況じゃなくなっちゃって……」

「どうしたんだ?」

「……今まで歌ってた曲、そして衣装が使えなくなっちゃったんだ!」

「それってヤバいことなのか? 新しいのを作ればいいだろ!」

「それが、そうもいかないんだよ……」


 事の重大さが分かっていない颯に、夏生は順を追って説明していく。


「僕たちの曲と衣装はね、全部同じソングライターとデザイナーが担当してくれてたんだ。その二人が突然、僕たちのプロデュースから降りたいって言ってさ……」

「なんでだよ?」

「……僕たちが、イマイチ有名にならないからだろうなぁ。二人とも業界ではかなり有名な人だから、マイナーグループに関わってるのが嫌になったんだと思う……」

「勝手な奴らだな! 有川たちはこれから絶対有名になるのにさ!!」

「……緒方くん、ありがとう。彼らはプロデュースの打ち切りだけじゃなくて、今までの曲と衣装の使用停止も求めてきたんだ。もしこれを破れば、然るべき場所に訴えるって……」

「さっきも言ったけど、そんな奴ら放っておいて新しい人に頼めばいいだろ!」

「……二人は、業界の重鎮なんだよ。だからいろんな場所に手を回してるみたいで、新しく作ってくれる人が見つからないんだ……」

「はあ!? なんだよそれ!? 腹立つ! 有川たち、めっちゃ頑張ってんのに!」

「……このままじゃ、コンサートが中止になっちゃうよ。確かに僕たちはまだまだ有名じゃないけど、楽しみにしてくれるファンの人はいるのに……」


 そう言って夏生は、再び溜め息を吐く。

 颯はソングライターとデザイナーへの怒りで頭を掻き毟った後、勢いよく席を立った。


「お、緒方くん、どうしたの?」

「有川、今日の放課後時間あるか!?」

「うん。大丈夫だけど……」

「じゃあ、ちょっと付き合ってくれ!」

「いいけど、どこに行くの?」

「ユリちゃんの店だ!」

「ユリさんのお店?」

「おう! 文化祭の時みたいに力になってくれるかもしんないし! 有川、そんな嫌がらせに負けて諦めんなよな! 絶対にコンサート、成功させようぜ!!」

「緒方くん……」


 当事者である夏生が諦めそうになっていたにも関わらず、颯は諦めていない。

 自分には全く関係ないことのはずなのに、こんなにも一生懸命になってくれている。

 それなのに、夏生本人が諦めるわけにはいかないだろう。

 折れかけていた心を再び奮わせると、夏生も颯と同じように立ち上がった。


「……ありがとう! うん! 僕、絶対に諦めない!」

「その意気だ!」


 こうして二人は、放課後の由莉の店に行くことになったのだった。

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