とりっくおあとりーと!!
「………………………………!!」
「そっかぁ! 今日はハロウィンパーティーだったよね!」
大和と美海がリビングに着くと、そこは橙と黒の装飾を施している真っ最中でした。
パーティーは夜からのはずなのに、みんな張り切っていますね。
「二人とも、おはよ……」
「はよ。よく眠れたか?」
(おはよう! シンから聞いたんだけど、今日は楽しい日なんだってな!)
キッチンから、心と蒼一朗とぱかおが出てきます。
心と蒼一朗は、中身をくり抜いたカボチャを持っていました。
ぱかおの鼻は、少しだけ黄色くなっています。
つまみ食いをしたのかもしれないですね。
「おはようございます。カボチャが想像以上に硬かったので、蒼一朗さんと心くんに手伝ってもらっていたんです。今日は、このカボチャを使ったハロウィンメニューですよ」
次にキッチンから出てきたのは、晴久です。
カボチャはとても硬い野菜なので、晴久の力では切れなかったのでしょう。
「………………………………♪」
「すごいたのしみ! みうもてつだいたい!」
「気合が入っているな。でも、朝食が先だ」
二人に声をかけたのは、柊平です。
紙で作られたジャック・オ・ランタンを飾っている途中のようです。
「………………………………!!」
「わかった! じゃあ、きがえてくるね! もうかそうする!?」
「それは後にしといた方がいいぜ! 夜までに汚れちゃったら残念だからな!」
そう言った颯の手には、黒猫の飾りがあります。
高い場所に手が届かず、なかなか苦戦しているようですね。
「そうだね! じゃあ、ふつうのふくにきがえてくる! やまとくん、いこっ!」
「………………………………☆」
「そこ、バランス悪くないですか? もう少し右の方がいいんじゃないかなぁ」
「……そう思うなら、自分で直せば」
「二人とも、喧嘩はやめてよ~。今日は楽しい日なんだからね☆」
湊人、理玖、虹太の声を聞きながら、大和と美海はリビングを出ようとします。
そんな二人を、呼び止める人物がいました。
「大和くん、美海ちゃん。おはよう」
「………………………………!!」
「とうかねえ、おはよう!」
そう、透花です。
彼女は優しい手つきで二人の頭を撫でながら、微笑みます。
「おはよう。今日はハロウィンパーティーだね」
「うん! みう、とってもたのしみ!」
「………………………………!!」
「私もだよ。お菓子を貰うための特別な言葉、覚えてるかな?」
「もちろん! やまとくんもだよね!」
大和はぶんぶんと大きく頷くと、急いでノートに鉛筆を走らせました。
鉛筆の動きが止まると、二人は息を合わせます。
美海がそう言ったのと、大和がノートを見せたのはほぼ同時でした。
さすが仲良しの二人、タイミングはバッチリです。
「とりっくおあとりーとだよ!」
“とりっくおあとりーと!!”
それは、この日だけ使える魔法の言葉です。
今日はいつもとは違う、少しだけ特別な日になるのでしょう。
このワクワクが、二人に不思議な夢を見せたのかもしれないですね。