おひめさまのとうじょう
時間を、少しだけ巻き戻してみましょう。
シンたちが戦っている頃、ヤマトとシュウヘイは最上階に到着しました。
その部屋には、魔王らしき男の姿しかありません。
姫であるミウは、ここにはいないようですね。
「……勇者様。私が斬りかかって隙を作ります。私の剣では奴を倒すことはできませんが、それくらいなら出来るはずです。……とどめを、お願いいたします」
「えっ……!」
ヤマトの話も聞かずに、シュウヘイは魔王に斬りかかります。
ミウを一刻も早く救出したいという想いが、彼を焦らせてしまったようです。
シュウヘイの攻撃は、魔王の剣によって防がれてしまいました。
「っと……! いきなりなんだよ!? あぶねーな!」
「問答無用だ! ミウ姫を返せ!」
「ミウ? ああ、なんだ。あいつの知り合いか。それなら……」
「貴様、なぜそんなに悠長なのだ!? 姫を出せ!」
「お前、少し話を聞けって!」
魔王の話も聞かずに、シュウヘイは攻撃を続けます。
魔王に戦意はないようで、シュウヘイの剣をひたすらに防いでいました。
何か喋りたそうですが、絶え間なく斬りかかられてはそうもいきません。
「ソウイチロウのことをいじめないで! シュウヘイのばか!!」
突然、可憐な声が部屋の中に響き渡ります。
誰かが、ヤマトたちが入ってきた場所とは別の扉からやって来たようです。
「姫様……!」
「ミウちゃん……!」
「ミウ……!」
そこには、一人の女の子が立っていました。
そう、この人物こそ、シュウヘイの主であり、今回の旅の目的でもあったミウ姫なのです。