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空をとんでる!
「……じゃあ、君たちを魔王の城まで送り届けるよ」
「まほうつかいさん、まって!」
「……どうしたの」
ヤマトたちは今、リクの家の外にいます。
杖を振ろうとした彼を、ヤマトが止めました。
「ぼく、このほうせきを女の子にかえさなきゃ!」
「……その必要はないよ。むしろ、それをちゃんと持っておいた方がいい」
「え……?」
「……じゃあ、気を付けて」
「あっ……! まって……! 今のってどういういみなの……!?」
ヤマトの質問には答えずに、リクは杖を振ります。
これ以上、語ることはないようです。
「わああああああああああ!!」
「っ……!」
「すごい! オレ、空を飛んでるぞ!!」
「僕はいつも飛んでるけど、こんなに速いのははじめて……」
リクの杖から出た光が、ヤマトたちを包みます。
するとその光は宙に浮き、すごい速さで進み始めました。
飛んで、魔王のお城まで行くんですね。
「……彼女も認めた勇者の実力、見せてもらうよ」
ヤマトたちが空の彼方に消えてから、リクはぽつりと呟きます。
それから大好きな苺ジャムを食べるために、上機嫌で家の中に入っていくのでした。