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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十九話
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待ち望んだ存在

「あっ……!!」

「勇者様、大丈夫ですか!?」

「すごい勢いよく抜けたな!」

「あんなに深く刺さってたのに……」


 剣は、簡単に地面から抜けました。

 力を入れていたため、ヤマトは反動で尻餅をついてしまいます。


「いたたたたた……。うん、大丈夫だよ。ありがとう。ちゃんとぬけてよかった!」


 シュウヘイに手を貸してもらい立ち上がったヤマトは、剣を掲げてみます。

 それはヤマトの身長よりも大きな大剣なのに、全然重くないのです。


「ヤマト、そんなごつい剣よく持てるな!」

「重くないの……?」

「うん、すっごくかるいよ! 羽が生えてるみたいだ!」


 初めて握ったにも関わらず、その剣はヤマトの小さな手にしっくりきます。

 まるで、昔からの親友と久々に会ったような感覚でした。


「……君が勇者だからそう感じるんだ。普通の人間だとこうはいかない。……鎧の君、試しにあの剣を持ってみてくれないか」

「……私か?」

「ああ。動物と妖精には無理だろう。……怪我しないようにね」

「……勇者様、失礼いたします」


 リクに促されたシュウヘイが、剣の柄へと手を伸ばします。


「ぐっ……! なんだ、この重さは……!?」


 しかし、すぐにその手を離してしまいました。

 いや、離さざるを得なかったのでしょうね。


「……こんな感じで、普通の人間には重くて扱えない。彼のように、鍛えられた騎士でもだ。……そんな剣を軽々と持ち上げる君は、本当に勇者みたいだね」


 この瞬間、リクの表情がほんの少しだけ緩みました。

 彼の一族は、代々この地で剣を守ってきたのです。

 勇者という存在を、誰よりも待ち望んでいたのはリクなのでしょう。


「……さて、魔王の城まで送ってあげるよ。外に出よう」


 緩んだ表情を見られないように、リクはみんなに背中を向けてしまいます。

 その背中を追って、みんなも階段を上っていくのでした。

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