"赤き光"のしょうたい
「こんにちは」
「………………………………」
木で出来た家の扉をノックすると、黒のローブを来た金髪の男の人が出てきました。
魔法使いのことをなんとなくおばあさんだと思っていたヤマトは驚きます。
「おにいさんだ……!」
「……勇者と、その従者たちだね。どうぞ、入って」
さすがは魔法使い、ヤマトが勇者だということが一目でわかったようです。
言葉こそ少ないですが、ヤマトたちを快く招き入れてくれました。
「……魔王を倒すための武器を貰いに来たんだろう」
「……わかっているなら話は早い。武器を渡してもらえないだろうか」
「構わないよ。それが僕の仕事だから。……でも、こちらの頼みも一つ聞いてもらう」
「……なんだ」
リクと名乗った魔法使いとシュウヘイの間に、緊張が走ります。
ヤマトはそれを、真剣な瞳で見つめていました。
しかし、シンは眠くなってしまったのか瞼が開き切っておらず、ぱかおは見慣れない植物に興味津々といった様子であちこちを嗅ぎ回っています。
この二人には、緊張という言葉は無縁のようですね。
「……ここまで来れたということは、”赤き光”を持ってるはずだ。それを渡してほしい」
「……その”赤き光”というのは、ルビーのことか」
「……ルビー? 僕は宝石になんて興味ないよ」
「「え……?」」
その言葉に、ヤマトもシュウヘイもびっくりです。
なんと、みんなをここまで導いてくれたのはあの宝石ではなかったようです。
「でもぼく、ほかになにも持ってないよ……?」
「……そんなはずはない。あれがなければ、ここまで辿り着くのは不可能だよ」
「もしかして、ジャムのことじゃないか!?」
部屋の中をうろうろしていたぱかおが、いつの間にか近くまでやって来ていました。
その背中には、シンが丸まって寝ているのが見えます。
「え……? ジャム……?」
「おう! だって、ヤマトが持ってるのってそれくらいだろ! それに、ジャムだってキラキラ光ってとってもキレイだからな! 赤い光にも当てはまってる!」
「これが、まほうつかいさんのほしい”赤き光”……?」
ヤマトは、自分の鞄からジャムの入った瓶を取り出しました。
リクは静かに頷くと、こちらへと手を伸ばします。
「……それを僕にくれたら、武器を渡すよ」
「……みんな、いいかな?」
「はい。私はもちろん構いません」
「オレも大丈夫だぞ! 朝、たらふく食ったしな! シンのことも心配すんな! 確かにこいつは食い意地が張ってるけど、マオウを倒すためなら我慢できる奴だ!」
「わかった! じゃあ、これをどうぞ」
「……確かに受け取ったよ。じゃあ、武器がある場所まで案内するからついてきて」
瓶を受け取ったリクは、満足そうな表情でヤマトたちを案内します。
リクの背中を追って、みんなはこの家の地下に続く階段へと足を踏み入れたのでした。