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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十九話
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やさしいコックさん

 ヤマトたち三人と一匹は、最初の予定通り食事処に来ました。

 あの女の子のことは気になりますが、考えても何も分からないからです。


「このパン、ふわふわですごくおいしいね」

「はい。スープも絶妙な味付けで、体が温まります」

「うまい! うまいぞ! もっと食べたい!」

「僕も……。おかわり、したいな……」


 みんなで食べるご飯はとてもおいしく、あっという間に食べ終わってしまいました。

 お腹が膨れたところで、これからについての話し合いをします。


「これから、どうしよう……」

「勇者様、とりあえず情報屋の言っていた森に行ってみませんか? 魔法を解くためのアイテムについてはわかりませんが、これ以上この町にいても新しい情報はないと思います」

「そうだな! 行ってみれば、何かわかるかもしれないぞ!」

「行動してみることで、開ける道があるかもしれないしね……」

「わかった! じゃあ、森に行ってみよう!」


 こうして一行は、森へと向かうことになったのです。

 しかしここで、困ったことが一つあります。

 そう、さっき貰ったたくさんの苺です。


「これ、持っていったらわるくなっちゃうよね?」

「……そうですね。この天気の中で持ち歩けば、確実に腐ってしまうでしょう。かといって、とても食べ切れる量ではありません……」

「シン! 出番だぞ! お前なら食えるだろ! ちなみにオレはお腹いっぱいだ!」

「僕も、もう無理……。体の大きさが人間くらいあれば、もっともっと食べれるのに……」

「あの、もしよかったらジャムにしましょうか?」


 困り果てたヤマトたちに、穏やかな声がかけられます。

 みんなが食事をしたテーブルの近くに、一人の男の人が立っていました。

 エプロンをしているので、このお店のコックさんなのでしょう。

 胸元には、”ハルヒサ”と書かれた名札をしています。


「突然ごめんなさい。困ってるように見えたので……」

「ううん、へいきだよ。ジャムにしたら持ち歩けるの?」

「はい。きちんと消毒した瓶に詰めれば、すぐに腐ることはありませんよ」

「じゃあ、お願いしようかな。みんな、それでだいじょうぶ?」

「勿論です。勇者様のお決めになったことに、異論などありません」

「オレも大丈夫だ! ジャムって、甘くておいしいやつだろ!? オレ、甘いの大好き!」

「僕も……。でも、生のも少し残しておきたい……。ちょっとなら食べれる……」

「わかった! じゃあ、お願いします!」


 ヤマトは袋からいくつか苺を取り出すと、残りをハルヒサに渡します。

 ハルヒサはそれを、丁寧に受け取りました。


「はい。少し時間がかかりますし、お疲れでしたらうちで休んでいってください

「そういえば、二階は宿屋だったよね。もう夕方だし、今日はここにとまろうか?」

「そうですね。では、部屋を一つお願いします」

「わかりました。完成したら、お部屋に届けますね」

「やったー! 今日はベッドで眠れるぞ!」

「最近野宿が多かったから、嬉しい……」


 こうしてヤマトたちは、苺を腐らせることなく保存することに成功したのでした。

 数時間後に完成したジャムは、ほっぺが落ちそうになるほど美味しかったようです。


「おいしい……!」

「……これは確かに、絶品ですね」

「甘い! うまい! 甘くてうまーい!!」

「……ん、美味しい。いくらでも食べられそう……」

「ありがとうございます。そんなに喜んでもらえると、僕もとても嬉しいです」


 翌朝、ジャムが入った瓶を持ってヤマトたちは宿屋を出ます。

 嬉しいことに、ハルヒサのお見送りつきです。


「ご利用ありがとうございました。お気を付けて!」

「こちらこそ、ありがとうございました!!」


 ヤマトはハルヒサに元気よく手を振ると、魔法使いがいるという森に向けて歩き始めたのでした。

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