とってもかわいい女の子
三人と一匹は、食事処に向かっています。
腹ごしらえをしつつ、これからの作戦会議をするのです。
その途中での出来事でした。
「あ、あれ……」
ヤマトが何かを見つけます。
彼の視線の先には、涙目になって地面に座り込んでいる女の子がいました。
年齢は、ヤマトと同じくらいでしょうか。
彼女に周りには、たくさんの苺が散らばっています。
どうやら、転んだ拍子にばら撒いてしまったようです。
通行人たちは見て見ぬ振りをし、彼女を助ける人間は誰もいません。
踏まれて潰れてしまった苺もいくつかあります。
「だいじょうぶ?」
「あ……」
「てつだうよ」
ヤマトはすぐに彼女に駆け寄ると、声をかけます。
そして、丁寧な手付きで一つずつ苺を拾い上げていきました。
「みんなもてつだって!」
「……かしこまりました」
「……ん。美味しそうなイチゴだね……」
「シン! つまみ食いはダメだぞ!」
「あっ、ありがとうございます!」
一人でやるのは大変だけれど、五人でやればあっという間です。
全部のイチゴを拾い集める頃には、女の子は笑顔になっていました。
(わあ……。かわいい子だなぁ……)
よく見ると、黒髪の似合うとても可愛らしい女の子でした。
その笑顔に、ヤマトは思わず見とれてしまいます。
(ぼく、この子をどこかで見たことあるような……? うーん、気のせいかな……)
いくら考えてもわからなかったので、ヤマトは気のせいだと思うことにしました。
そんなヤマトを見ながら女の子が年齢にそぐわない上品で美しい笑みを浮かべていることに気付いた者は、この場にはいなかったのでした。