たびのぎんゆうしじんさん
酒場を出たヤマトとシュウヘイは、シンとぱかおを探します。
二人の姿は、人だかりのある場所で見つかりました。
その中心には旅の吟遊詩人がおり、二人は彼の歌を熱心に聴いているようです。
大きな帽子を被り、見たこともない弦楽器を奏でている吟遊詩人。
彼の口から紡がれているのは、昔からの伝承でした。
漆黒を身に纏う者たちよ
誰よりも光に憧れているが
自分から近付くことは決してない
闇に近い彼らが光を求めれば
たちまちその身は滅んでしまう
彼らは今日も待つのだ
赤き光をもたらす存在を……
吟遊詩人の歌が終わると、その場がお客さんたちの拍手で包まれます。
歌だけではなく、彼の指から奏でられる音色も甘美なものでした。
「ねえねえ、おにいちゃん!」
「ん? どうしたの~?」
彼の歌を聞いていた少女が、話しかけます。
少女の瞳は、キラキラと輝いていました。
「今のおうたは、どういういみなの?」
「う~ん、残念だけど俺もよくわかんないんだよね! 子どもの頃に、俺が住んでた町に吟遊詩人のおじいさんが来たことがあってね。その時に教えてもらったんだ♪」
「そっかぁ。すてきなおうたをありがとう!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ~☆」
吟遊詩人は周りを見渡すと、へにゃりと笑います。
「みなさん、今日は聴いてくれてありがとうございました~! 吟遊詩人コウタを見かけた際は、ぜひまた足を止めてくださいね~☆」
コウタと名乗った吟遊詩人は、ちゃっかり宣伝までしています。
歌の意味は、ヤマトにも全然わかりませんでした。
でもその美しい歌は、彼の心に深く刻まれたのです。