おきると、そこはいせかいでした。
「勇者、起きないね……」
「……ああ。このままだとまずいことになるぞ……」
「もふもふ攻撃してみるか? あまりの気持ちよさに、目を覚ますかもしれないぞ!」
(んん……)
「あ……。目、覚めた……?」
「勇者様! お体に異常はありませんか!?」
「勇者ヤマトはお寝坊さんなんだな! おはよう!」
(ん……??)
勇者ヤマトが目を覚ますと、二人と一匹が彼の顔を覗き込んでいました。
(しゅうへいおにいちゃんに、しんおにいちゃん……? ぱかおもいる……)
この二人と一匹は、勇者がよく知る者たちです。
ですが、いつもとは服装や体の大きさなどが違っていました。
(しゅうへいおにいちゃんのよろい、重くないのかな……? しんおにいちゃんは、どうしてこんなに小さいんだろう……。せなかに羽もついてるし……。あれ……? さっき、ぱかおしゃべったよね……? ぼく、なんで言葉がわかったのかな……?)
一人の男は、重そうな甲冑を身に纏っています。
もう一人の少年は掌に乗れるほど小さく、背中にある羽で空中に浮いていました。
そして、銀色の毛のふわふわの動物。
なんと彼は人語を操るようで、ヤマトにはその言葉が理解できました。
「勇者、しゃべらないね……」
「……起きたばかりで、まだ混乱されているのだろう」
「やっぱり、もふもふ攻撃するか!? 気持ちよさに絶対声を出すぞ!」
(みんな、ぼくがしゃべれないの知ってるはずなのに……)
「それー!!」
「「あっ……!!」」
「わぁっ……!」
銀色の動物が、ヤマトの胸に飛び込んできます。
受け止めたヤマトの口からは、自然と声が出ていました。
「あれ……? 声が、出る……?」
「ほらな! しゃべっただろ!」
「……そうだね」
「……ああ。私たちのよく知る、勇者様のお声だ」
「ゆうしゃ……? ぼくが……?」
ヤマトは、辺りを見回してみます。
彼が眠っていたのは、見たこともない荒野でした。
――――――――――彼はどうやら、異世界に来てしまったようです。