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One for all,All for one
「柏木、頑張れー!」
「部長の所までもう少しだぞ!」
「俺らの分まで走ってくれー!」
恵輔が待つ場所に近付くにつれて、蒼一朗を応援する声が多くなる。
そこには、遠征や怪我で今日の大会に出られなかった部員たちの姿があった。
透花が様々な場所に手を回し、彼らが来られるように手配したのだ。
(みんな、ありがとな……!)
声援を全身で感じながら、蒼一朗は走る。
すると、予定していたよりも早い場所に恵輔がいるのが見えた。
彼もまた、逆走してきたのだった。
「柏木くん!」
「部長、なんでここに……!?」
「みんなが頑張ってるのに、僕だけただ待ってるわけにはいかないよ!」
「……そうっすよね。あんたは、そういう人だ。これ、お願いします!」
「任せて! 必ずゴールに届けるからね!」
蒼一朗の襷から外された襷を、恵輔が受け取る。
ここまで繋いできた皆の絆は、途切れることなく最終走者の手に渡ったのだった――――――――――。