繋がった想い
蒼一朗は、ただただ懸命に走っていた。
彼の頭にあるのは、ここまで繋いできた襷を途切れさせたくないという気持ちだけだ。
視界に、小さくだが第八走者の姿が映る。
今にも倒れそうだが、なんとか前に進んでいるようだ。
(待ってろよ……! すぐ行くからな……!)
蒼一朗はスピードを上げ、彼の元へと向かう。
だが、もう少しというところで第八走者は足を滑らせてしまった。
限界を超えた体が、ゆっくりと倒れていく。
「あっ……」
「………………………………!! おい! 大丈夫か!?」
間一髪間に合った蒼一朗は、第八走者の体を抱きとめる。
彼の顔は、汗や涙などでぐちゃぐちゃになっていた。
「柏木……? なんで……?」
「襷を受け取りに来たんだ。後は俺に任せてくれ」
「ごめん……! 俺……!」
「謝るようなことしてないだろ。お前がすげー頑張ってたから、俺はここまで来たんだぜ」
「………………………………!! ありがとう……! 頼んだ……!」
涙を溢れさせながら、震える手で襷を渡す。
蒼一朗は、それをしっかりと受け取った。
「おう。必ず部長に襷を届けるからよ。……すみません、選手交代です。こいつのこと、よろしくお願いします」
蒼一朗は係員に第八走者を預けると、襷を体に掛ける。
そして、恵輔が待つ場所へと走り出したのだった――――――――――。