弟のおねだり
時は、晴久が任務に出る前日まで遡る。
夕飯後のダイニングで、蒼一朗の弟である大和は何かを伝えたそうにもじもじしていた。
今ダイニングには、蒼一朗と大和、心と妹の美海、理玖、そして透花の六人が残っている。
隣のキッチンでは、晴久と颯が洗い物をしていた。
「やまとくん! ほら! そうにいにわたさなきゃ!」
美海に促され、大和は一枚の紙をポケットから出し、それを蒼一朗に渡す。
「んー……? 地域運動会のお知らせ……?」
それは、月末の祝日に行われる地域運動会のお知らせだった。
この辺りに住んでいる者なら老若男女問わず誰でも参加できるもので、毎年比較的賑わっているのだ。
「大和、これ行きたいのか?」
蒼一朗の問い掛けに、大和は大きく頷く。
「よしっ! じゃあ行くか!」
その言葉に、大和の顔に笑みが広がった。
「やまとくん! あれもちゃんとつたえなきゃ!」
しかし、美海がそう言ったのを聞いて、大和は少し困った表情になってしまう。
「……じゃあみうが、やまとくんのかわりにせつめいする! あのね、そうにい……」
美海は、放課後に通っている学童クラブで今日起こったことを話しはじめた。