新たな、大きな一歩
「……部長は、俺らがどこか本気じゃないのに気付いてたんだと思う。だから異隊の話も、プレッシャーにならないように言わなかったんじゃないかな」
(……そんな器用な人には見えねーけど)
「こんな俺らを部に置いてくれて、普通に仲間扱いしてくれること、すげー感謝してるんだ。……っつーわけで、やっぱり大会に出るよ。……いや、出たいんだ!」
「おう。いいんじゃねーの」
あっけらかんと言い放った蒼一朗に、部員たちは驚きを隠せない。
都合がいいという自覚はあるので、辛辣な言葉をかけられると思っていたからだ。
「……昨日はあんなこと言ってたのに都合よすぎだろ、とか言わないのか?」
「言わねーよ。俺のこと、なんか誤解してないか?」
「中途半端なことは絶対に許さない奴だと思ってるんだけど……」
「まあ、そうだな」
「じゃあ……!」
「だってお前ら、ちゃんと覚悟決めたんだろ。じゃあ、中途半端でもなんでもねーじゃん」
「「「「「………………………………!!」」」」」
その言葉は、部員たちにとって嬉しいものだった。
「……俺の方こそ、お前らのこと誤解してた」
蒼一朗は気まずそうに視線を漂わせながら、口を開く。
「……もう、練習には来ないと思ってた。でも、今日の練習見てお前らにも熱いところがあるってわかったわ。俺、そういうの好きだぜ。……大会、一緒に頑張ろうな!」
「ああ! 改めて、今日からよろしくな!!」
蒼一朗と部員の一人が、固い握手を交わす。
こうして駅伝部は、一ヶ月後の大会に向けて新たな一歩を踏み出したのだった――――――――――。