知る者と知らぬ者
「柏木、少し話したいことがあるんだけど……」
「……わかった。わりい、先に帰っててくれるか?」
「……では、お先に失礼します」
「お疲れ、様でした……」
「お疲れっしたー!!」
練習を終え、部室を出ようとしたところで蒼一朗は部員の一人に呼び止められた。
柊平、心、颯を先に帰し、昨日の部員と蒼一朗だけになる。
恵輔は練習後に任務があるため、一足先にあがっているのだ。
「……昨日の話の続きだろ?」
「……ああ、そうだ」
「……てっきり、今日からは練習に来ないと思ってたぜ」
「俺らも、そのつもりだったんだけど……」
五人はお互いに目配せをすると、一斉に頭を下げた。
突然の出来事に、蒼一朗は動揺を隠せない。
「は……!? いきなりなんだよ……!?」
「昨日はあんなこと言ったけど、やっぱり俺らも大会に出てもいいか!?」
その言葉は、蒼一朗を更に驚かせる。
「……俺としてはその方が助かるからいいけど、何があったんだよ。昨日はあんなに嫌がってたじゃねーか。練習見てた感じ、部長に説得されたわけでもなさそうだし……」
「……柏木は、部長が異隊したいと思ってる話を知ってるか?」
「ああ、知ってるぜ。そのために、駅伝部の優勝を目指してんだろ」
「……やっぱり、お前は知ってたか」
「……これって、駅伝部の奴ならみんな知ってるんじゃねーの?」
「……他の奴らはどうか知らないけど、俺らは知らなかったよ。今日まではな……」
視線を下げたままの一人の部員が、今日起こった出来事について話し始めたのだった――――――――――。