昨日までと変わらぬ風景
翌日、蒼一朗が練習に行くと、予想通り部員たちはグラウンドに来ていなかった。
だが、恵輔はいつものように朗らかで、特に変わった様子はない。
「柏木くん、今日も張り切っていこう!」
「うす。……あの、部長。他の奴らは?」
「まだ来てないよ。任務が長引いてるんじゃないかな?」
「……そうっすね」
「先に練習を始めておこう」
どうやら彼らは、まだ恵輔に話をしていないようだ。
彼らの態度に苛立ちを感じながらも、蒼一朗は練習を始めた。
それから、二十分ほど経った頃だろうか。
「「「「「遅れてすみません……!」」」」」
棄権をすると言っていた五人の部員たちが、グラウンドにやって来たのだ。
「ごめんね。先に始めちゃったよ」
「いえ。俺らが遅かったのが悪いんで」
「ストレッチをしたら、練習に加わってくれるかな」
「「「「「うす!」」」」」
部員たちは何事もなかったかのようにストレッチを始める。
そしてそのまま、練習に加わった。
(どうなってんだ……?)
彼らの練習態度が、昨日までとはまるで違うのだ。
淡々とメニューをこなしているだけだった彼らの瞳には、確かな熱意が籠っている。
(さっきの感じだと、部長が説得したとかでもなさそうだし……。何があったんだ?)
グラウンドには、人数が少ないながらも活気が溢れている。
そして、蒼一朗の疑問が解けないままこの日の練習は終了したのだった。