それは、思わず声を呑むほどの
「いやー、みんなそれぞれに長所があって素敵なランナーだね!」
本日の練習を終えた蒼一朗、柊平、心、颯、そして恵輔の四人は帰路に就いていた。
助っ人の三人の能力が想像以上に高かったため、恵輔からは笑みが零れる。
「結城くんは持久力があるね! ずっと同じペースで走り続けられるのはすごいことだよ」
「部活で、体力作りのために走ってるから……」
「それに対して、緒方くんは瞬発力が素晴らしい! ほんとに部活とかやってないの?」
「やってないっすね! でも、たまに蒼一朗さんについていってトレーニングしてます!」
「久保寺くんは、バランスの取れた走りだったね。長距離も短距離もいけるんじゃない?」
「……ありがとうございます。久米さんに比べればまだまだですが」
恵輔の親しみやすい性格のおかげか、すっかり三人と打ち解けているようだ。
その光景を穏やかな気持ちで見守っていた蒼一朗だったが、あることに気付く。
「やべっ。練習着が入った袋忘れてきた。洗濯しないとなんねーのに……」
「柏木くん、大丈夫? 僕たちここで待ってるから、取ってきなよ」
「すんません。でも、走って追い付くんで先行っててもらって平気っす!」
そう言うと、急いで部室へと引き返す。
中にはまだ部員たちが残っているようで、電気が点いていた。
(さっさと取って、戻んねーと……)
蒼一朗がドアノブに手をかけようとした、その時のことだった。
「まさか、俺らが出場することになるなんてな……」
「そういうのがないから気楽にやってこれたのに……」
「……お前、どうする?」
「うーん、正直出たくない……」
「俺も……。棄権、するか……?」
部室の中から、耳を疑うような声が聞こえてきたのは――――――――――。