少年のような笑顔で
翌日、蒼一朗が柊平、心、颯の三人と一緒に練習に行くと、恵輔が駆け寄ってきた。
「後ろの三人は、一色隊の人たちだよね。もしかして、助っ人!?」
「うす」
「柏木くん、ありがとう!! 僕や他の部員たちも知り合いをあたってみたんだけど、全然ダメでさ。これで十人揃ったから、大会に出られるね!」
恵輔は、少年のような笑顔を浮かべて喜んでいる。
彼の言う通り、蒼一朗以外は助っ人を連れて来られなかったようだ。
グラウンドは、昨日と同じように静かなままである。
「改めまして、こんにちは。僕は駅伝部の部長をやっている、久米恵輔という者です。地域運動会の時に会ってるんだけど、覚えてるかな?」
「……覚えてます。僕は結城心、です……。よろしくお願いします……」
「俺も覚えてるっす! 蒼一朗さんより足が速くてめっちゃビビりましたもん! 俺は緒方颯って言います! よろしくおなしゃーす!!」
「結城くんと緒方くんか。こちらこそ、よろしくお願いします。今回は本当にありがとう!」
心と颯の名前を聞いた恵輔は、柊平の方を向く。
この二人には、地域運動会以外での面識もあるのだ。
「久保寺くん、久しぶり。その節はお世話になったね」
「……いえ、こちらこそ。隊員がご迷惑をおかけしました」
「……あー、そっか。夏休みに俺が酔っぱらった時の……」
「うん。彼が迎えに来てくれたからね。その時に自己紹介したんだ」
「……二度と、あんなことはごめんだからな」
「わーってるって。もう、あんな飲み方しねーよ」
夏に蒼一朗が恵輔と酒を飲んでいた際に、自力では帰れないほど酔っぱらってしまった。
この時に蒼一朗を迎えに来てくれたのが、柊平だったのだ。
蒼一朗は全く覚えていないが、二人は自己紹介をしていたらしい。
「じゃあ早速だけど、どれくらい走れるのか見せてもらえるかな? 僕と一緒に走ってくれればいいからね。辛くなったら、遠慮なく言ってくれて大丈夫だから」
「はい……」
「ラジャーっす!!」
「……わかりました」
「柏木くん、君は他のみんなと一緒に練習を始めておいてくれる?」
「うっす。じゃあ、また後で」
こうして蒼一朗は四人の元を離れると、練習を開始すべく他の部員たちのところへと向かったのだった――――――――――。