嬉しい誤算
「……悪いが、その日は任務がある」
「……無理」
「ぼ、僕じゃとてもお役には立てないかと……」
「俺もパスー!」
「僕も遠慮させてもらいますね」
「別に、いいけど……」
「走るだけで蒼一朗さんが助かるなら、参加するに決まってるっすよ!」
上から、柊平、理玖、晴久、虹太、湊人、心、颯の順である。
柊平を含めた五人に断られることは、想定内だった。
だが、他の二人が参加してもいいと言ってくれたことは嬉しい誤算である。
「心、颯、ありがとな! すげー助かるわ……」
「体作りは、大切だから……」
「いいい一応確認なんすけど、女子マネとかいないすよね!?」
「大丈夫だ。いねーよ。部員は全員男だ」
「それならよかったっす!」
ここで、透花が助け舟を出す。
「柊平さん、その日の任務はなくなったよ」
「……そうですか」
「それも踏まえて、どうかな?」
「……それならば、別に構いません」
「よかったね、蒼一朗さん」
任務がなくなったことを伝えると、柊平はあっさりと参加することを決める。
蒼一朗は、まさか自分の頼みを柊平が聞いてくれるとは思っていなかった。
そのため、驚きで開いた口が塞がらないようだ。
「……何か不都合でもあったか?」
「いや、すげー嬉しいけど……。どういう風の吹きまわしだよ」
「……最近、運動不足だと感じていたからな」
「そっか……。まあ、サンキュ」
普段よりも幾分柔らかな表情で、蒼一朗は礼を言う。
こうして大会に出場する三人は、翌日から駅伝部の練習に顔を出すことになったのだった――――――――――。