千人力の女、出場不可にて
「私は別に構わないよ」
「ほんとか!? すげー助かるわ……」
帰宅した蒼一朗は、真っ先に透花の元へと向かう。
事情を説明し、大会に出場してもらえないか掛け合ってみたのだ。
「あんたが出てくれりゃ千人力だな」
「……でも、一つ確認したいことがあるのだけれど」
「なんだ?」
「……そういう部の大会って、隊長は出られないんじゃなかったっけ?」
「あ……」
隊長とは、心技体に優れた者が選出されている。
度を超えた活躍をしてしまう可能性があるため、部の大会への出場は禁止されていた。
「……すっかり忘れてたわ」
「この規則を破るのは、今後の駅伝部のためにもよくないよね」
「……だな。仕方ねぇ。他にも声かけてみっか……」
「うちの隊員たち?」
「ああ。一人くらい出てくれる奴がいてくれりゃいーんだけど……」
「……ちなみにその日、柊平さんは任務が入っています」
「マジかよ……」
透花の一言が、蒼一朗を更なる絶望へと突き落とす。
体力的な面を考えれば、柊平が第一候補というのは妥当だろう。
蒼一朗が頼んだところで、彼が引き受けてくれるかどうかは分からないが。
「まあ、この辺は融通を効かせるよ。そのために私がいるのだし」
「……ほんと、すげー助かる。あとは、出てくれる奴を探すだけだな……」
「そうだね。最終手段”隊長からの命令”があるけれど、これはなるべく使いたくないかな」
「……俺もだ。寄せ集めのメンバーでも、無理矢理走らせるようなことはしたくねーからな」
「うん、そうだね。そろそろ夕飯だし、その時にみんなに聞いてみようよ」
「……だな」
こうして蒼一朗は、いつになく重苦しい空気を漂わせながら食事へと向かったのだった――――――――――。