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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十八話
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大会、一ヶ月前

 この日、蒼一朗は透花とのトレーニングに励んでいた。

 その走りには、普段よりも力が入っているように見える。

 だが、ランニングを終えた後の勝負は今日も透花の勝ちだ。


「くそっ……。今日も、負けた……」

「いや、でもかなり僅差だったよ」

「……確かに、何カ月か前に比べれば差は縮まってる気がするわ」

「今日の走りは、特に力が入っていたね」

「ま、大会も近いしな」


 蒼一朗の所属する駅伝部の大会が、一ヶ月後に迫っていた。

 それに向けて、いつも以上に奮励しているのだ。

 蒼一朗の出場する大会は、特殊なルールのものだった。

 複数人が襷を繋ぎ、交代で走るという点は同じだ。

 だが、一人一人の走る距離が定められていない。

 チームごとに戦略を練り、襷を渡すタイミングを決めることが可能なのだ。

 出場する人数に制限はあり、一度走った者が再び走ることは出来ない。

 このような特殊ルールの中、蒼一朗たちは優勝を目指している。


「蒼一朗さん、レギュラーに選ばれるかな」

「正直、わかんねーな。夏は全然練習に行けなかったし」

「……ごめん。それ、私のせいだよね」


 一色隊は長い休みを貰ったため、夏は王都を離れていた。

 そのため、蒼一朗はほとんど練習に参加できなかったのだ。


「そんなんじゃねーよ。あんたのおかげで、大和とも色々思い出作れたし。単純に、俺の力不足ってだけだ。未だにあんたにも部長にも勝てねーし、速い奴らばっかりだからな」

「……ありがとう。レギュラーになれるといいね。みんなで応援に行くからね!」

「おー。そのためにも、俺はもう少し走ってくわ」

「付き合うよ。最後に、また勝負しようか」

「……いいぜ。次こそは、俺が勝つ」

「私だって負ける気はないよ。というか、隊長として隊員に負けられないです」


 二人は再び走り出した。

 風は少しずつ冷たくなってきたが、体を動かしているおかげで寒くはない。

 蒼一朗は、まだ知らなかった。

 彼自身、いや、駅伝部全体に待ち受けている悲劇を――――――――――。

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