この命に代えても
「できた……!」
湊人は宣言通り、目標としていた十分以内のプロテクト解除に成功した。
すぐに、透花と通信を繋ぐ。
「もしもし、透花さん。解除に成功したよ」
『湊人くん、ありがとう! やってくれるって信じていたよ』
「お礼は、ちゃんと助かってから顔を見て言ってほしいなぁ。手動モードに移行するね」
『了解! 機長、ここからはお願いしま……』
ここで、透花の声が途切れた。
だが、通信が遮断されたわけではないようだ。
「……透花さん? どうかしたの?」
『機長が、失神してる……!』
「……それ、本気で言ってる?」
なんと、極限の緊張状態に機長が意識を失ってしまったのだ。
「……副機長がいるでしょ。彼に頼めば……」
『副機長は、客室に行ったきり戻ってきていないの。恐らく、乗客の混乱を抑えるだけで手一杯なんだと思う。だから、すぐに呼び戻すことは……』
『……隊長、私が操縦します』
そう言うと柊平は、レバーに手を掛けた。
彼は、様々な乗り物の運転をマスターしているのだ。
『柊平さん……』
『二階堂、一番近い空港に緊急着陸する。そちらで連絡を取ってもらえないか』
「……わかった。顔も知らないパイロットより、あなたの方がよっぽど信用できるよ」
『安心しろ。この命に代えても、隊長はお守りする』
湊人はすぐに透花たちの乗る飛行機に一番近い空港を調べ、連絡を取った。
緊急事態について伝わっていたようで、すぐに着陸の許可が下りる。
「着陸許可、下りたよ……!」
『了解した。……隊長、放送を入れてもらっても構いませんか』
『わかった! 当機はこれより、緊急着陸態勢に入ります。皆様、衝撃に備え出来る限りの安全な姿勢を取ってください……!』
こうして透花たちの乗る飛行機は、降下を開始したのだった――――――――――。