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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十七話
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それを背負うのは、私だけでいい

 最後の機体の解析を始めて十分ほどしたところで、再び透花から通信が入った。


『湊人くん、お疲れ様。今、どんな感じか教えてもらってもいいかな?』

「ほとんどの機体のプロテクト解除に成功したよ。……残りは、あなたの乗る機体だけだ」

『かなり順調だね。さすが湊人くんは優秀だよ』

「……そんなことを言うために、わざわざ通信を入れたんじゃないでしょ?」

『……私たちが乗っている機体の高度が、徐々に下がり始めているの』

「………………………………!!」

『……焦らせるようなことを言うのは忍びないのだけれど、多分もう時間がない』

「……少なく見積もっても、あと十五分はかかるよ」

『十五分か……。柊平さん、どうかな?』

『……ギリギリ、間に合うかどうかというところだと思います』


 その言葉を聞き、湊人のキーボードを叩く指、そしてマウスを持つ手に震えが走る。

 この状況になり、改めて自分の指先にかかっている”重み”を理解したのだ。


『湊人くん、今、怖い顔をしているでしょう』

「は……?」

『見なくてもわかるよ』


 透花の発言に、湊人は言葉を失ってしまう。

 それは、この緊急事態には相応しくないものだった。


『湊人くんは、いつもみたいに余裕の笑みを浮かべて、自分のやるべきことをやってくれればいいんだよ。自分の指先に、多くの人命が委ねられているなんて考えないで。そういうのを背負いこむのは、隊長である私の仕事なんだから』


 命の危機に晒されているというのに、透花はいつもと変わらず微笑んでいるのだろう。

 通信機越しに声を聞くだけでも、それは容易に想像できた。

 湊人は彼女の言葉を頭の中で反芻しながら、深呼吸をする。

 自然と、震えは止まっていた。


「……十分で、プロテクトを解いてみせるよ」

『うん! それでこそ湊人くんだ!』

「……必ず成功させるから、死なないでよね」

『任せておいて! 私は、絶対に死なないよ』


 透花が、何を根拠にそこまで言い切れるのか湊人には分からない。

 だが、彼女がそう言うと、どんな不可能なことでも実現できそうな気がしてくるのだ。

 通信を切ると、湊人はモニターを睨みつけた。

 そこには、先程までの焦燥に駆られた青年の姿はない。

 集中すると、鋭い眼差しで画面と向かい合うのだった――――――――――。

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