無沙汰は無事の便り
湊人は、プログラムに掛けられたプロテクトを次々に解いていく。
その仕事ぶりに、突然やって来た彼に反感を持っていた輩も目を見張るばかりだ。
(さて、残りは二つになったわけだけど……)
とうとう、最後の二機を残すのみとなった。
その内の一機は、透花と柊平の乗っている機体である。
(隊長殿の言う通り、こっちを優先させてもらうよ)
透花に言われたように、二人が乗っていない機の解析に取り掛かる。
――――――――――だが、これが湊人の想像以上に曲者だったのだ。
(……あー、もう! めんどくさいなぁ!)
いくら解いても、すぐに次のプロテクトが湊人の前に立ちはだかる。
湊人は苛々しながらも、一つずつそれに立ち向かっていった。
そして解析を終えた頃には、三十分という時間が経過していた。
(さっきまでは、一機に五分もかからなかったのに……)
この時、初めて湊人の心を不安が過ぎった。
(……透花さんたちの乗っている機体の解析にも、同じくらいの時間がかかる。本当に、間に合うのか……? さっきから連絡がこないけど、まさかもう墜落してるんじゃ……。……いや、そんな報せはきてない。どれくらいかはわからないけど、まだ時間はあるはずだ……)
湊人は悪い考えを振り払うように首を振ると、再びモニターに向かう。
だが、焦りは増していくばかりだ。
彼に追い打ちをかけるような通信が入るまで、あと十分――――――――――。