充電不足が招いた幸運
「あ、湊人くん。少しいいかな」
『透花さん、どうしたの? まだ飛行機の中にいる時間だと思うんだけど』
「その分だと、ニュースにはなっていないみたいだね。実は……」
透花が連絡を取ったのは、湊人である。
詳しい事情を聞きながら、キーボードを叩く音が聞こえた。
「……というわけなんだ」
『なるほど。報道したところで解決できるような問題でもないから、公表はしてないんだろうね。でも、いくら僕でも自分のノーパソから空港のシステムへはアクセスできないなぁ』
「……そうだよね。帰り道のところ申し訳ないんだけど、空港に引き返してもらうことは可能かな? それで間に合うかどうかわからないけれど……」
『透花さん、運がよかったね。僕が今、どこにいると思う?』
「え……? もしかして……!」
『うん。まだ空港を離れてないんだ。僕としたことが、パソコンの充電を怠っちゃってね。少し充電してから帰ろうと思って、空港内のカフェにいるよ』
「よかった……! じゃあすぐに、管制室に向かってもらってもいいかな? 入れるようにこちらから手配をしておくから」
『わかった。解決したら、ボーナスをたんまりお願いするよ』
「了解! では、また後で連絡するね」
透花は通信を切ると、機長と向き合う。
「この手のことに詳しい隊員が、現在空港にいるそうです」
「それはなんとも幸運な……!」
「管制室に向かうように指示しましたので、彼が入れるように手配をお願いできますか」
「勿論です!」
「名前は、二階堂湊人。黒縁の眼鏡をかけた青年です」
透花からの情報を元に、機長は管制室へと通信を入れる。
こうして一色隊の、地上と上空でのハイジャック犯との戦いは幕を開けたのだった――――――――――。