たまには男に花を持たせてくださいっす!
「お待たせしましたっす! 早速行きましょう!」
「おかえり。ごめん、少し待ってもらえるかな。まだ食べ終わってなくて……」
準備を終えた颯が戻ってきても、透花の皿の上にはパンケーキが残っていた。
「全然平気っす! 透花さん、うちにいると目立たないけど結構食べるの遅いっすね」
「そうだね。自分でもゆっくりだと思うよ。たくさん咀嚼しないと飲み込めないんだよね」
「そんな、ばあちゃんじゃないんすから! 俺なんて、晴久さんの料理が美味すぎていっつもあっという間に食べ終わっちゃいます!」
「あの勢いはすごいよね。さすが成長期だなぁって感じるもん」
透花はその後、颯に手伝ってもらいながらパンケーキを平らげた。
「ごちそうさまでした。お会計は……」
「大丈夫っすよ! ここは俺が奢ります!」
「いいの?」
「うっす! せっかく来てくれるんだから、みんなの食事代は俺と心で出そうって決めてたんすよ! だから気にしないでください!」
「じゃあ、お言葉に甘えるね。ありがとう」
「いえいえ! この後なんですけど、心のとこ行ってみないすか?」
「いいね。弓道体験ができるんだっけ? 心くんの弓道衣姿も楽しみだなぁ」
「よし! じゃあ行きましょう!」
会計を済ませると、二人は仲良くパンフレットを見ながら教室を出て行く。
その距離は、どう見ても親密な男女のものだった。
(((((あれで付き合ってないなんて、男女とは不思議なものだ……)))))
颯のクラスメイト、そして模擬店を一緒に開いている女子生徒たちは、皆一様にそう思ったという――――――――――。