えへへ! 俺、頑張ってるっす!
「透花さん、触ってもいいすか!?」
それは、夕飯が終わりリビングで寛いでいる時のことだった。
颯が、急に爆弾を投下したのだ。
この発言により、口に含んだ飲み物を吹き出しそうになった隊員が数人いた。
「どうぞ」
「失礼します!」
透花は、なんのためらいもなく笑顔で了承する。
すると颯は、透花の手をペタペタと触り始めた。
「うーん、やっぱり平気なんだよなぁ……」
「颯くん、何かあったの?」
「うっす。実は……」
颯は、この日の文化祭準備中に起こった出来事を話し始めた。
教室から飛び出した颯が心に発見された頃には、すっかり日が暮れていたのである。
ほとんどの生徒が帰宅しており、今日の分の準備は既に終わっていた。
「というわけで、わざとじゃないんすけど準備サボっちゃったんす……」
「そうだったんだね」
「はあ……。透花さんには触れるし、ちゃんと話もできんのになぁ……」
落ち込む颯の頭を、透花は優しく撫でる。
「今日のことは、明日みんなに謝れば大丈夫だよ」
「透花さん……」
「女の子が苦手なのに、ちゃんと準備を頑張っているんだね。偉い、偉い」
「えへへへへ! そうっす! 俺、頑張ってるっす!」
「文化祭当日が楽しみだなぁ」
「当日は、俺もっともーっと頑張りますから! ぜっっったいに遊びに来てくださいね!」
先程までは暗い顔をしていたのに、透花と話をしただけで太陽のような笑顔を浮かべる。
それを黙って見ていることができないのが、他の隊員たちだ。
「……透花さん、僕も撫でて。部活もクラスの出し物も頑張ってる」
「よしよし。心くんの弓道着姿を見るの、待ち遠しいなぁ」
「颯くんと心ちゃんばっかずるーい! 透花さん、俺も俺も~!」
(なんだ!? トウカに撫でてもらう会か!? オレも参加するぞ!)
「とうかねえ、みうも!」
「………………………………!!」
心を筆頭に、頭を撫でて欲しい者たちが透花のもとへと殺到する。
こうして一色隊の夜は、にぎやかに更けていくのだった――――――――――。