か、会話したぜ……!(※してません)
「寧々ちゃん、またいらっしゃいね。ガールズトークしましょ!」
「はいっ!」
「颯ちゃんはほどほどにしなさいよね! 来てくれるのは嬉しいけど、服ばっかり買ってるとすぐにお金なくなっちゃうんだから!」
「わかってるって!」
颯と寧々が由莉の店を出る頃には、日も暮れかかっていた。
颯はそのまま、寧々に挨拶もせずに帰路に着こうとする。
(何か言った方がいいんだろうけど、俺には無理! さっさと帰るに限るぜ……!)
歩き出してしまった颯を、寧々が呼び止める。
「あ、あの、緒方くんっ!」
名指しで呼ばれたので、颯は足を止めた。
だが、決して振り返ることはしない。
「素敵なお店に連れてきてくれてありがとう! 衣装も決まってよかったね! 文化祭がんばろう! ば、ばいばいっ!」
同じ空間にいたおかげで、寧々は颯に少し慣れたのだろう。
颯は一刻も早くこの場を立ち去りたいが、無視することはできない。
苦肉の策で、右手を少しだけ上げた。
そして、今度は走り出してしまう。
(お、俺、一人でも女子と喋れた……! 遂にやったぜ……! 家に着いたら、誰かに褒めてもらおう!! うおおおおおおおおおお!!)
反応を返しただけで、決して会話にはなっていない。
颯がこのことに気付くのは、屋敷に着いて話を聞いた虹太に突っ込まれた時だったという――――――――――。