次も頑張るから、めちゃくちゃ褒めてくれよ……!
「………………………………」
「………………………………」
他の班の話し合いが終わり解散の時間になっても、颯と女生徒の間に会話はなかった。
颯は明後日の方向を見ているし、女生徒はただ俯くばかりだ。
それを見かねた心と夏生が、こちらにやってくる。
今度は、他のクラスメイトたちからの妨害もなかったようだ。
「二人とも、お疲れ様。話し合いは進んだ?」
「……逆に聞くけど、進んだと思うか?」
「……ごめん。えっと、藍原さんで合ってるかな?」
夏生からの問い掛けに、女生徒はこくりと頷く。
「今日はもう解散みたいだよ。話し合いが進んでないなら、連絡先を交換したらどうかな?」
夏生の提案に、颯はあからさまに嫌そうな顔をする。
「緒方くん、そんな顔しないでよ。二人とも面と向かって話すのは苦手みたいだから、文字ならどうかなって思ったんだ。それなら、話もしやすくない?」
「……そうだな。このまま衣装が用意できなかったら、みんなにも迷惑かかるし……」
「……わ、わかりましたっ。私も、そちらの方が話しやすいので……」
颯はこの時、女生徒の声を初めて聞いた。
それはか細く、今にも消えてしまいそうなほどに小さかった。
二人は夏生の助けを借りて、なんとか連絡先を交換する。
自分の電話帳に、透花以外の女性の名前があるということが不思議で仕方ない。
「……颯くん、頑張ったね」
「今からこんなんじゃ先が思いやられるけど、俺、頑張ったよな……!? 心、もっと褒めてくれ……!! 褒めてもらえたら、次も頑張れそうな気がするぜ……!」
「……よしよし。よくできました」
この日は、このような会話を交わしながら教室へと戻った。
文化祭開催当日までの約二週間を、颯は無事に乗り切れるのだろうか。
それは、神のみが知ることなのである――――――――――。