どうしてこんなことになったんだよ……!
これだけで、話し合いが終わるはずもない。
模擬店の内容も決まり、次の議題は当日までの準備についてだ。
「な、ななななななんで俺が……!」
「だって緒方、こういうの得意だろ? 衣装だけにそこまで金かけらんないし、お前ならなんかコネとかありそうだしさ! みんなのために頼むよ~!」
「違うって! 問題はそこじゃねーから……!」
颯の趣味を知っている男子生徒たちから、衣装係に任命されたのだ。
全員分の衣装を、出来るだけ安い値段で用意する。
洋服好きの颯にとって、仕事の内容自体に問題はない。
「なんで女子と二人なんだよ……!」
颯の目の前には、眼鏡をかけた大人しそうな女子生徒が立っている。
どうやら、彼女が女子の衣装係らしい。
「他の班はグループなのに……! どうして衣装班だけ……!」
「もし手作りすることになったら人数増やすって! でも、市販のを買うだけならそこまで人数いらないだろ? 内装とか調理とか、他の班に人手が欲しいんだよ」
「頼む……! 誰か一人でいいから、男子入れてくれよ……!」
「……緒方。俺はこれでも、お前の未来を危惧しているのだ」
「は……?」
クラスメイトは颯の肩に手を回すと、小声で喋り始めた。
「お前、これからもずっと女嫌いでいくつもりか?」
「お、俺の意思じゃねーんだよ……! 体が勝手に反応するっていうか……!」
「試しに、ちょっとでも女子と話してみろって! なんか変わるかもしんないだろ? もしかしたら、これを機に克服できるかもしれないじゃんか!」
「別に俺は、そんなの望んでない……!」
「これは、俺たちクラスメイトの総意だ。みんな、お前の女嫌いを治したいって思ってる」
「し、心……! 有川……! 助けてくれ……!」
颯は、心と夏生に視線を向ける。
だが二人は、他のクラスメイトたちに阻まれてしまいこちらに来られそうにない。
「というわけで、頑張れよ! いい衣装、期待してるからなー!」
「あ……! ちょっ……! 待てよ……!」
クラスメイトは、そう言い残すと大勢の男女の輪に入っていってしまった。
颯には、そこに行き再び直談判をすることはできない。
こうして、颯と名も知らぬ女子生徒の二人だけが、その場に残される形になったのだった――――――――――。