なんでもいいから、とにかく早く決まってくれ!
「はいはーい! 有川くんがいるんだし、飲食店がいいと思いまーす!」
「私もさんせーい! カフェとかどうかな?」
「カフェねぇ。いいんじゃね?」
「中学の文化祭は、展示とかお化け屋敷とかだったからな~。飲食店って憧れあるわ!」
男女混合での話し合いは、みんなどこかそわそわしているが問題なく進んでいた。
芸能活動をしている夏生を広告塔として、飲食店を開くことになりそうだ。
視聴覚室に来るまでは威勢の良かった颯だが、今ではすっかり憔悴してしまっている。
夏生の隣の席に座ったのが、運の尽きだ。
女子からこちらに視線が向けられる度に、どんどん顔色が悪くなっていく。
自分が見られているわけではないと、理解しているにも関わらずだ。
こればかりは、いくら気合いを入れたところでどうしようもないのである。
「有川は、それで大丈夫か? 客寄せパンダみたいになっちまうけど……」
「うん! 僕は平気だよ!」
「やっぱり有川くんって優しいんだね!」
「ねっ! 二組でよかったー!」
「せっかくの文化祭だし、どうせならコスプレとかしようよ!」
「いいね! 私、有川くんの執事姿見てみたいかもー!」
「男子が執事なら、女子はメイドの格好しろよな!」
「やだー! 男子ってばへんたーい!」
「そう言うなって! その格好なら、カフェでも違和感ないしな!」
小さくなっている颯をよそに、話し合いはどんどん進んでいく。
最終的に、執事とメイドに扮した生徒たちが軽食や飲み物を提供する店に決定した。
(決まった……! これで、この空間ともオサラバだぜ……!)
一人でガッツポーズをしている颯は、まだ知らない。
この先に、更なる地獄が待っていることに――――――――――。