すごいおいしゃさん
持ち帰った薬を、理玖は大和と美海に飲ませた。
熱が下がり、顔色はみるみるよくなっていく。
一時間もすれば、会話ができる状態まで回復していた。
「りくにいは、やっぱりすごいおいしゃさんなんだね……」
「………………………………」
美海からの賛辞の言葉、そして大和からの無言の感謝を受け取ると部屋に戻る。
洞窟で生成した分だけでは、他の患者まで行き渡らせることはできない。
手持ちの薬を元にして、全員に配れる量を確保しなければならないのだ。
そこからの理玖の集中力は、凄まじいものだった。
晴久が飲み物を持って行っても、反応すらしない。
無視をしているのではなく、音が耳に入っていないのだ。
その作業は一昼夜続き、翌日の昼には全ての薬が完成していた。
「……これで、足りると思うけど」
出来上がった薬を、透花に渡しに行く。
「……飲みやすいように、カプセルに入れてある。飲めばすぐに効果が出て体調はよくなるけど、しばらくは安静にするように伝えて。僕は寝るけど、量が足りないとか、薬が効かないとか、何かあったら起こしてくれていいから。じゃあ」
透花の返事も聞かずに、理玖は自室へ向かう。
集中している時は気付かなかった猛烈な眠気が、彼を襲っているのだ。
寝不足でふらつく体で部屋に戻ると、ベッドへと倒れ込む。
(疲れた……)
理玖はいつも、あまり眠りが深い方ではない。
だがこの日は珍しく、泥のように眠ったのだった――――――――――。