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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十五話 オーランピドールの雫を飲み干して
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君たちの幸せを願うよ

 透花たちは雪男たちの問題が解決したことを報告するため、山守の家へと寄った。

 山守は、三人の無傷での帰還に驚きを隠せない様子だ。


「あんたら、無事だったのか!?」

「はい。この通り怪我一つしていませんよ」

「よかった……! 儂は、あんたらのことを止めるどころか頼み事までしたから……。もしあんたらが死んじまったらどうしようって……」

「安心してください。その件については、全て解決しましたから」


 透花は、笑顔でそう言い切った。

 それから、事の顛末について説明していく。

 首謀者である魔法使いの存在にはあえて触れずに、悪い人間の仕業ということにして。


「そうか……。そんなことが起こってたんだな……」

「でも、彼らの洗脳は解けました。二度と、人間を殺めるような真似はしません」

「本当によかった……! あいつら、自分の意思で殺しをしてたんじゃなかったのか……」


 山守は、ほっとしたように息を吐いた。

 そんな彼に、透花はまだ伝えなければならないことがある。


「……今回の件を受けて、彼らは更に山奥に移り住むことにしたようです。それこそ、人間が足を踏み入れられないような場所に。ですから、もう偶然出くわすこともないでしょう」

「……少し寂しくなるが、仕方ないことだよな。元はといえば、儂ら人間が縄張りを踏み荒らしたのが悪いんだ。それなのに、あいつらを追いやることになって申し訳ないと思う。……あいつらの新しい暮らしが、平穏であることを願うさ」


 山守はそう言うと、窓越しに洞窟を見た。

 その視線には、以前のような悲哀は含まれていない。

 穏やかで、優しい光が宿っている。


「本当に世話になったな。すぐに、王都に帰るのか?」

「はい。仲間が、私たちの帰りを待っているので」

「これ、よかったら持っていってくれ」


 山守は三人に、タンブラーを一つずつ渡す。


「ほうじ茶が入ってる。あんたらが戻ってきたら渡そうと思って、用意してたんだ」

「ありがとうございます。まだまだ寒い場所を歩かなければならないので助かります」

「本当は食事でもご馳走してもてなしたいところだが、急いでるんだろ? そんなもんじゃ礼にもならないけど、ないよりはマシだろ」

「あまりお気になさらないでください。自分の用事のついでに解決できたに過ぎませんから。それに、今の私たちにはこれが何よりのもてなしですよ」


 透花たちは、タンブラーを手に山守の小屋を出る。

 そして、王都へ帰るべく雪道を歩き始めたのだった――――――――――。

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