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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十五話 オーランピドールの雫を飲み干して
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空気が還っていく

(妾のことがわかるのだな……!? まさか、再びこのように話すことができるとは……)


 雪男はオーランピドールに駆け寄ると、涙を流した。

 会話をしているようだが、透花たちには彼女の言葉しか聞こえない。

 雪男の泣き声は、言語ではなく唸るような音として届くだけだ。


「……申し訳ありません。これは一体どういうことなのでしょうか」

「……僕も、どうして君が雪男と一緒に来たのか聞きたいんだけど」

「少し、状況を整理する必要があるね。柊平さん、私たちと別れた後に何があったか話してくれないかな。私も、この洞窟内で起こっていることについて話すから」

「……かしこまりました」


 三人は、それぞれに起こった出来事を共有した。

 その間も、雪男はオーランピドールの隣で泣き続けている。


「……なるほど。理玖の睡眠薬の中に、毒を中和するような成分が入っていたのかな?」

「……まあ、そう考えるのが妥当だろうね。心当たりはある」

「他の者たちも、正気を取り戻してくれればよいのだが……」


 大きな怪物が、まるで子どものように泣きじゃくっているのだ。

 自我はなかったにしろ、人間を殺すという行為はよほど辛かったのだろう。


(そちらには、感謝してもしきれぬ……! 恩に着るぞ……!!)

「……偶然による結果だけどね」

「そうだね。でも、その偶然がこの洞窟のみんなを救ったんだよ」

「あの、目的のオーランピドールの雫は……」

(心配するな! そちらは妾たちの恩人じゃ! この体、いくらでもくれてやろうぞ!)

「……薬を作ることもできそうだ」

「あなたの貴重な体、ありがたく頂戴させていただきます」

「……これで、王都の人々も助かりますね」


 先程まで、この洞窟は悲壮感で満ちていた。

 だが今は、オーランピドールを中心に少しずつ温かい空気が広がっていくのだった――――――――――。

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