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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十五話 オーランピドールの雫を飲み干して
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無残な傷痕

 目の前で平伏している雪男を、柊平は観察する。

 戦っていた時には気付かなかったが、その体には多くの傷跡が残されていた。

 それは、自然に負った怪我とは考えにくいほど無残なものばかりだ。

 傷痕に交ざり、注射痕のようなものも刻まれていた。

 雪男の体は、人間と比べると遥かに大きい。

 必然と、太い注射器を使用しなければならなかったのだろう。

 医学に詳しくない柊平が見てもわかるくらいに、その痕は存在を主張している。

 周りで寝ている雪男たちを見てみたが、全員が同じ傷を負っているようだ。


(……雪男たちに、注射器を扱うような文化があるとは思えない。それに、目が覚めてからのこの怯えよう……。まさか……)


 一つの結論に辿り着いた柊平は、静かに口を開く。


「……その傷は、人間にやられたのか?」


 柊平の言葉を聞き、雪男の震えが再び大きくなる。

 どうやら、正解のようだ。


(……突然の凶暴化は、人間が原因かもしれないということか)


 未だに震えが止まらない雪男の体を、柊平はもう一度見た。

 この傷の全てが人間によって施されたものかもしれないのだから、放ってはおけない。


「……私の仲間に、傷を癒すための薬を持っている者がいる。その者に、お前たちの治療をするように頼もう。私に敵意がなければ、このままついてきて欲しい」


 柊平はそう言うと、洞窟の奥へと向かう。

 雪男は震える足でなんとか立ち上がると、柊平の後ろを歩き始めたのだった――――――――――。

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