無残な傷痕
目の前で平伏している雪男を、柊平は観察する。
戦っていた時には気付かなかったが、その体には多くの傷跡が残されていた。
それは、自然に負った怪我とは考えにくいほど無残なものばかりだ。
傷痕に交ざり、注射痕のようなものも刻まれていた。
雪男の体は、人間と比べると遥かに大きい。
必然と、太い注射器を使用しなければならなかったのだろう。
医学に詳しくない柊平が見てもわかるくらいに、その痕は存在を主張している。
周りで寝ている雪男たちを見てみたが、全員が同じ傷を負っているようだ。
(……雪男たちに、注射器を扱うような文化があるとは思えない。それに、目が覚めてからのこの怯えよう……。まさか……)
一つの結論に辿り着いた柊平は、静かに口を開く。
「……その傷は、人間にやられたのか?」
柊平の言葉を聞き、雪男の震えが再び大きくなる。
どうやら、正解のようだ。
(……突然の凶暴化は、人間が原因かもしれないということか)
未だに震えが止まらない雪男の体を、柊平はもう一度見た。
この傷の全てが人間によって施されたものかもしれないのだから、放ってはおけない。
「……私の仲間に、傷を癒すための薬を持っている者がいる。その者に、お前たちの治療をするように頼もう。私に敵意がなければ、このままついてきて欲しい」
柊平はそう言うと、洞窟の奥へと向かう。
雪男は震える足でなんとか立ち上がると、柊平の後ろを歩き始めたのだった――――――――――。