火蓋は切られた
「……お出ましだね」
「……そうみたいだね」
「……お二人とも、お下がりください。ここは私が……!」
更に洞窟の奥へと進んでいくと、三人は数匹の雪男と出くわした。
透花たちの姿を確認すると、すぐさま襲い掛かってくる。
柊平が透花と理玖の前に立ち、攻撃を防ごうとする。
だが、雪男はそんな柊平を無視して、一目散に理玖へと向かっていった。
「っ……!」
「理玖、危ない!」
「お前たちの相手は、私だ……!」
雪男は体が大きいので、力はあるが動きはそこまで速くない。
柊平は理玖の前に回り込み、剣で雪男の拳を受け止めた。
(ぐっ……! 一撃が重い……! 春原がこれをくらったら、ひとたまりもないぞ……!)
受け止めた拳を弾き返すと、そのまま雪男の腕を斬り付ける。
傷は付けられたが、怯む様子は全くなかった。
間髪を入れずに、別の雪男が拳を振り上げ走り寄ってくる。
「……隊長! 私に任せて、先に行ってください……!」
「……柊平さん、大丈夫?」
「……はい。ここで春原を失うわけにはいきませんので。すぐに全員を眠らせ後を追います」
「……わかった。ここは任せるね。決して無理はしないように。理玖、行こう!」
「……ああ」
雪男たちは、執拗に理玖を狙い行く手を阻もうとした。
だが、透花と理玖は上手く彼らの間を掻い潜り洞窟の最奥部へと走っていく。
「……ここは通さないぞ」
二人が走り去った道を守るように、柊平が立ち塞がった。
雪男たちも、姿が見えなくなってしまった理玖から、目の前にいる柊平にターゲットを変更したらしい。
これでもかというほどに目を開き、口からは涎を垂れ流しながらこちらに向かってくる。
柊平と雪男たちの戦いが、今ここに始まろうとしていた――――――――――。