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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十五話 オーランピドールの雫を飲み干して
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傷付けずに先に進む方法で

「自分たちの意思で戦っているのではないなら、できるだけ傷付けずに進みたいね」


 洞窟の中を進んでいると、ふと透花が零した。


「柊平さん、峰打ちとかで雪男を気絶させることはできないかな?」

「……隊長、お言葉ですがそれは難しいことかと」

「柊平さんの腕をもっても無理?」

「……私の剣は両刃です。その、刀などとは違い峰はありませんので……」

「あ……。そっか、そうだよね。うーん、困ったなぁ……」

「……これが使えるかもしれない」


 そう言って理玖が取り出したのは、瓶に入った粉末だ。


「……それはなんだ?」

「……眠り薬だ。これを雪男に嗅がせれば寝てくれるかもね」

「……その薬は、人間以外にも効果があるのか?」

「……さあ、どうだろう。試したことがないから分からないよ」

「……いや、使えるかもしれないな。春原、その薬は鼻や口から取り込まなくても効くか?」

「……どういうこと」

「……例えば、傷口などから入り込んでも効果はあるだろうか」

「……それって」

「……ああ。私の剣にそれを付着させ、傷を付ける程度の攻撃を行う。その場合でも、奴らを眠らせることは可能だと思うか?」

「……できるんじゃないかな。だけど、問題点が二つある」

「……なんだ」

「……一つは、本来は口から入れるように作ってあるから、傷口からだと薬が体に回るまで多少時間がかかるはずだ。雪男は、体が僕ら人間よりも大きいだろうし」

「……なるほど。眠るまで時間を稼がねばならないということか」

「……二つ目は、薬の効果が続く時間だ。同じ理由で、口から入れるよりも薬が効く時間は短くなると思う。彼らを眠らせている間に、オーランピドールを入手して解毒薬を作る。そして凶暴化の原因まで究明するとなると……」

「……時間的には、かなり厳しいな。薬はそれしかないのか?」

「……ああ。何度も同じ手は使えないね」

「でも、やってみる価値はあるんじゃないかな?」


 柊平と理玖の間に漂う暗い空気を払拭するように、透花は明るく言い切った。


「現状、それ以上の作戦はないと思うよ。せっかく考えたんだし、やってみよう」

「……そうだね。この薬は、君に渡しておく。間違って吸い込まないように」

「……ああ。早速剣に付着させる。……悪いが、マスクを持っていないか?」

「……はい」

「……恩に着る」


 三人は一度足を止め、柊平が剣に睡眠薬を塗り込むのを待った。

 作業を終えると、再び進み始める。

 奥から聞こえる雪男の声は、着実に大きくなってきていた――――――――――。

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