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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十五話 オーランピドールの雫を飲み干して
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悲しい変化の理由を突き止めろ

「……雪男たちの様子が変わってしまったとは、どういうことでしょう?」

「最近のあいつらは、なんだかおかしいんだ……!」


 透花の問い掛けに答えるように、山守はぽつりぽつりと話し始めた。


「……雪男は基本的に、そこまで凶暴なもんじゃねえ。オーランピドールが関わらなきゃそこそこ温厚だ。洞窟の外で出くわしたことがあるんだが、襲ってくる様子もないしな。……洞窟の中に入ってくる人間に対しても、昔は違ったんだ。脅かして、そいつらが帰るように仕向けるだけだったのに、最近は……」

「……もしかして、殺しをするようになったのですか?」

「……ああ。ここ一ヶ月くらいで、二人死んだよ。死体が洞窟の外に放置されてるのを、儂が見つけた。グラソン地方で暮らしてる奴にとって、オーランピドールの情報はそれほど珍しいもんじゃないんだ。だから、貴重な花を目的にそういう馬鹿な奴らがやって来るんだが……。悪いのは人間の方だって、もちろん分かってる。自分たちの縄張りを荒らされて、怒るのも当たり前っつーのも……。だけど、だけどよお……!」


 山守は、皺の刻まれた顔を歪めながら、苦しそうに言葉を吐き出す。


「どうして、こんなことするようになっちまったんだよ……!」


 彼は、長い間この地で山守をしている。

 だからこそ、彼にしか分からない雪男との絆のようなものを感じていたのだろう。

 透花は山守を落ち着かせるように、静かな声で言った。


「……わかりました。私たちにお任せください。その原因、究明してみます」


 この発言に、柊平と理玖は驚きを隠せない。


「隊長、それは……」

「ちょっと……」


 二人の言いたいことはわかる。

 三人には、寄り道をするような時間はないのだから。

 透花は柊平と理玖を片手で制すると、山守と向かい合った。


「ですが、私たちはオーランピドールの入手を優先しなければなりません。その過程で、出来る限り調べてみたいと考えています。せっかく助けていただいたのに、必ずできるとお約束できないのは申し訳ないのですが……」

「……いや、それだけでもありがたいさ。当の自分は、殺されるのが怖くて洞窟に入れないんだからな……。どうか、よろしく頼む……!」

「はい。成果を持ち帰れるように、最善を尽くしたいと思います」


 こうして透花たちは、目的を一つ増やして向かうことになった。

 雪男が住むという、凍てつくような寒さの洞窟へ――――――――――。

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