洞窟の奥から聞こえる声
透花たちの前に現れたのは、近くの小屋で山守をしている男だった。
疲労している三人を家に連れ帰ると、温かい飲み物を出してくれる。
それをありがたくいただきながら、透花はここまでの経緯を説明した。
「そうか。王都では、そんな病が流行ってるんだなぁ」
「はい。その病を治すためには、オーランピドールという植物が必要で……」
「オーランピドール!? やめとけやめとけ! あんなもん、取りに行くのは無理だ!」
この口ぶりから、山守はオーランピドールについて何かを知っているようだ。
「オーランピドールについてご存知なのですか? 幻の花と聞いて来たのですが……」
「儂の一族は、代々山守をしているからな。この辺のことならなーんでも知っとるよ」
「よろしければ、オーランピドールについて教えていただけませんか?」
「それは別に構わねーけどよ……」
「ありがとうございます。情報不足なので、とても助かります」
透花の笑顔に絆された山守は、少しずつ情報を話し始めた。
「オーランピドールが、どんな場所に生えてるかは知ってるか?」
「はい。洞窟の奥だと聞きました。ですが、この辺りには洞窟がいくつもあると……」
「ああ。それも、似たような洞窟がたーくさんな。しかも、その中のどれか一つしか当たりはないときてる。……だけどよ、一つだけその洞窟を見分ける方法があるんだ」
「……その方法とは、どんなものなんでしょう?」
「……当たりの洞窟からは、声が聞こえるんだよ」
「声、ですか……?」
「……ああ。オーランピドールを守る、雪男たちの鳴き声がな」
山守から発せられた言葉に、三人は思わず息を呑むのだった――――――――――。