理由は分からないけれど
「理玖、その植物は……」
「まさか……」
「……デザントクスィカフィーヌだ」
理玖は、先程見つけた解毒草を手に透花と柊平が待つ部屋へと戻った。
「……どこにあったの?」
「……地下の、栽培場に。水や栄養も与えられていて、とても元気な状態だったよ」
「……外に生えていたものが、ここに植え替えられていたということか?」
「……恐らくね。誰が、なんのためにやったのかはわからないけど」
理玖はここで、一つ嘘を吐いた。
どうしてこのようなことが行われたのか、その理由は本当に分からない。
だが、行動を起こした人物については検討がついている。
「……いくつか、根ごと拝借して自分でも栽培してみようと思う。そうすれば、また万が一必要になった時にわざわざ取りに来なくて済むからね」
「誰かが手入れをしてくれていたのだろうけれど、ここは元々理玖の家だもんね。少しぐらい貰っても罰は当たらないよ。よし、手に入ったのなら次に行こう。本当に大変なのは、きっとここからだからね。柊平さん、よろしくお願いします」
「……かしこまりました」
こうしてデザントクスィカフィーヌを入手した三人は、全てを凍らせてしまう極寒の地、グラソンへと向かうのだった――――――――――。