懐かしい後ろ姿
透花たち三人は、森を抜けるべく歩き続けている。
その途中で、とある建物が見えてきた。
(……ここは、変わらないな)
そこは、理玖が以前住んでいた家だった。
理玖が離れた時と変わらず、静かに佇んでいる。
(ん、あれは……?)
無人のはずの家から、誰かが出て来る。
理玖はその後ろ姿に見覚えがあった。
(どうして、あの人がこんな所に……)
その人物は、すぐに木々に紛れ消えてしまう。
透花と柊平に視線を向けるも、二人は会話をしていたので気付いていないようだ。
(僕の見間違いか……?)
理玖は、あまり視力がいい方ではない。
それに加え距離があったので、見誤った可能性も否定できない。
だが、今の彼らにはどれだけ小さな手がかりでも欲しいのだ。
「……二人とも、少しいいかな。うちに寄っていきたいんだけど」
「……何かあったのか?」
「……気になることがあるんだ。急いでるのはわかってる。時間はかけないから」
「大丈夫だよ。今回は、柊平さんも家に入れてもらえるよね?」
「……好きにしてよ。僕から、外で待っていてなんて言う気はないから」
いたずらな微笑みを浮かべる透花に、理玖はため息交じりで返事をする。
こうして三人は、理玖が以前暮らしていた家へと足を踏み入れたのだった――――――――――。